健全イネでの常在が明らかになったPseudomonas huttiensisの再分類
- [要 約]
- Pseudomonas huttiensisが,健全イネから高頻度に分離され,はじめて植物体に生息していることが明らかになった。本菌は遺伝子の相同性と細菌学的性質により,1986年に新設されたHerbaspirillum属の細菌と位置づけられる。
[担当研究単位] 農業環境技術研究所 農業環境インベントリーセンター 微生物分類研究室
[分 類] 学術
- [背景・ねらい]
- 農業環境中には,様々な微生物が生息し,生態系の維持に重要な役割を果たしていると考えられ る。このうち,共生微生物などについては多くの研究があるが,常在微生物についての研究はほとんどない。今回,今まで蒸留水からのみ分離、記載された細菌が健全イネから多数分離された。分離株は,イネ体内で他の微生物の増殖を抑制したので,これらの分類学的な検討を行った。
- [成果の内容・特徴]
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- P.huttiensisは,イネの下部葉鞘から常に分離され,葉鞘に常在している菌群の一つであることが明らかになった(図1)。
- 本菌は,16S rDNAの塩基配列の相同性およびDNAの類似性により,1986年に新設されたHerbaspirillum属であることが判明した(表1)。
- 本菌は,既知のHerbaspirillum属細菌とは異なり,その判別の特徴として,窒素固定能(アセチレン還元活性)が陰性の他,5つの細菌学的性質の違いがある(表2)。
- [成果の活用面・留意点]
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- イネに常在する細菌として,微生物の分類や生態研究の基礎的な知見となる。微生物インベントリーを通して広く情報として提供する。
- 地域や分離部位が異なった場合の本菌の常在性については,未検討である。
[その他]
研究課題名 : 主要イネ科植物に常在する微生物相の分類,同定及び機能解析
並びにインベントリーのためのフレームの構築
予算区分 : 運営費交付金
研究期間 : 平成13年(平13〜17年度)
研究担当者 : 篠原弘亮,對馬誠也,月星隆雄,吉田重信,西山幸司,門田育生(現,農研機構)
発表論文等 : 篠原弘亮,他,イネ褐条病細菌のイネ組織内増殖を抑制する
細菌の分類学的検討.日植病報, 67(2),177,(2001)
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