凝集剤による水田からのダイオキシン類の流出防止法
- [要 約]
- 代掻き時に凝集剤として塩化カルシウムまたは塩化カリウムを施用することで,水稲収量を低下させることなく田面水の懸濁物質(SS)を速やかに沈降させ,SSに吸着しているダイオキシン類の水田系外への流出を大幅に軽減できる。
[担当研究単位] 農業環境技術研究所 化学環境部 ダイオキシンチーム
化学環境部 重金属研究グループ 土壌化学ユニット
[分 類] 技術
- [背景・ねらい]
- ダイオキシン類は水田中で土壌粒子等に吸着・蓄積されており,代掻き時などにSSとともに流出するため水田系外への環境負荷が懸念されている。凝集剤を用いて田面水中のSSを効率的に沈降させ,水田からのダイオキシン類の流出防止技術を開発する。
- [成果の内容・特徴]
- 粘土の分散性が高くSSが生じやすい水田圃場(黄色土)に凝集剤として塩化カルシウムまたは塩化カリウムを施用して代掻きすると,田面水中のイオン強度が高まりSSが凝集し易くなる。このため,SSは沈降し流出が抑制される(図1)。
- 凝集剤を15kg/10a施用するとSSが充分に沈降するのに24時間以上要するが,30kg/10aでは代かき1時間後に同程度の効果が得られる。沈降促進効果は塩化カルシウムがやや高い(図1)。
- 田面水に含まれるダイオキシン類含量は凝集剤施用で著しく低下する(表1)。
- 凝集剤施用は水稲の生育および収量に悪影響を示さず,本技術は現地圃場に適用できる(図2)。
- [成果の活用面・留意点]
- 代掻き時においてダイオキシン類を含んだSSの流出抑制に活用できる。
- 凝集剤は約2,000円/25kg(塩化カルシウム),約1,000円/20kg(塩化カリウム)と低コストである。
[その他]
研究課題名 : 土壌凝集剤および吸着剤を用いた化学物質の汚染拡散防止技術の開発
(イネ等におけるダイオキシン類の吸収,移行特性の解明)
予算区分 : 環境研究[有害化学物質]
研究期間 : 2003年度(2003〜2007年度)
研究担当者 : 牧野知之,大谷 卓,清家伸康,菅原和夫
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