土壌情報の一元的収集システムの開発


[要 約]
 Web GISの機能を使って全国規模の土壌調査結果(現地情報,断面記載,理化学分析値,土壌図)を地形図上に表示し,調査現場においてオンラインで新たな調査結果を入力や修正できるシステムを初めて開発した。現行の行政調査事業における結果を効率的かつ一元的に収集できる。
[担当研究単位] 農業環境技術研究所 農業環境インベントリーセンター 土壌分類研究室
[分 類] 行政

[背景・ねらい]
 全国規模の土壌調査結果は,これまで各種コンピューターメディアを使って,一定フォーマット のファイルを郵送により収集している。この際ファイル破壊などの事故やデータ修正に時間がかかるなどの問題がある。このため,過去の調査研究や事業などにより得られた土壌情報を,全国の野外現地や実験室などから閲覧でき,かつ,分散した機関が得ている調査結果を効率よく一元的に収集できるシステムを開発する。
[成果の内容・特徴]
  1. 行政調査事業「土壌環境基礎調査(定点調査)」の結果をもとに土壌分類研究室のデータベースサーバーに土壌情報データベースを構築し,オンラインでこのデータベースにアクセスして以下のことができる。
  2. GIS機能を使って,1/50,000地形図の上に農耕地土壌図と定点調査地点を表示できる。土壌図または定点調査地点を画面上から選定することにより,土壌または調査地点の情報を表示できる(図1)。
  3. 調査年次や都道府県などから調査地点を検索し,調査区分を選択することで調査結果を表示でき,この画面からデータを修正できる(図2)。集計については,調査年次,都道府県および層位を指定して,地目別,土壌群別または土壌統別に最小値,最大値および平均値を表示できる。
  4. 新しいデータは,画面上で項目ごとにコード選択や測定値を書き込むことで入力するか,別途エクセルファイルを作成し一括して入力する。コード表にないコードやあり得ない値は入力時にチェックされ,データの信頼性を向上させている。
  5. 本システムには,農耕地土壌分類第3次改訂版による土壌分類プログラムが付属しており,調査地点を選択すると土壌名が表示できる。新たな調査地点については,データ入力後,このプログラムで第3次改訂版による分類ができる。
[成果の活用面・留意点]
  1. 土壌調査を行っている公立試験研究機関にIDとパスワードを発行する。
  2. インターネット・エクスプローラでのみ動作を確認している。
  3. 土壌特性別の主題図(例えば,土性図や保水容量図など)の表示機能も順次追加される。
  4. 関係機関との協議を経て,データを公開する。

[その他]
 研究課題名 : 機能に基づく土壌分類の体系化と土壌インベントリーのためのフレームの構築
        (機能に基づく土壌の分類及びインベントリーのためのフレームの構築)
 予算区分  : 総合研究[協調システム]
 研究期間  : 2003年度(2001〜2003年度)
 研究担当者 : 中井  信,小原 洋,大倉利明
 発表論文等 : 1)中井,農業および園芸,76(10),1123-1130 (2001)

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