集団茶園地帯から流出する硝酸性窒素の水田による除去可能量


[要 約]
 牧ノ原台地の集団茶園地帯から平水時の河川に流出する硝酸性窒素量は1年間1haあたり約200kgと見積もられる。茶園地帯周辺のいくつかの河川流域では、非作付期にも水田に湛水灌漑することで、流出硝酸性窒素量を上回る除去可能量が得られる。
[キーワード] 硝酸性窒素、茶園、水田、窒素除去
[担 当] 静岡農試・海岸砂地分場
[区 分] 関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料、共通基盤・土壌肥料、野菜茶業・茶業
[分 類] 技術・参考

[背景・ねらい]
 茶園では、大きな硝酸性窒素負荷排出が認識され減肥対策が取られ始めている。しかし、減肥対 策と同時に、過去の多施肥により茶園下の深い地層に集積し流出を続ける硝酸性窒素の除去対策も重要で、流出水に対して水田・休耕田の脱窒機能を活用することが有効と考えられる。そこで、台地上に茶園が広がるモデル地域において、小河川を通じて流出する硝酸性窒素量に対し、水稲非作付期に湛水した場合を含めた水田による除去可能量を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
  1. モデル地域は牧ノ原台地の南東部末端に位置し、地域内には上部の大部分5.4km2を茶園が占める台地がある(図1)。この台地は河川に取り巻かれて他の台地より独立し、また茶園以外に大きな窒素負荷源を有さない。従って、台地周辺河川を流れる硝酸性窒素量から茶園由来の流出量を評価できる。
  2. 月に1度の水質・水量調査結果から平水時各河川の1年間の硝酸性窒素流量を求めると、2001年10月〜2002年9月の場合、最小39kgから最大27,942kgとなり(図1)、この地域全体で113トン、1haあたりの茶園から1年間に209kgの硝酸性窒素が流出したと推定される。なお、地域全体の硝酸性窒素流出量には、1999年以降の調査で大きな変化が認められていない。
  3. モデル地域内全水田面積は132ha、水田は内陸部に多く海岸低地部で少ない(図2)。各流域別に水稲作付状況での除去速度(2.3kgN ha-1 d-1、戸田ら1997)を用いて算出した水田による硝酸性窒素の除去量は、水稲作付期間(6〜8月)に各河川を流出している硝酸性窒素量に対し、内陸部で100%、海岸低地部では3〜51%となる(図2)。
  4. 同地域内にある休耕田において、硝酸性窒素濃度の高い河川水を通年湛水灌漑(面積50m2、流入水平均硝酸性窒素濃度26〜31mgNL-1、流入水量6〜9月7706mm、10〜11月5370mm、12〜3月7794mm、4〜5月3173mm)したところ、0.58〜1.04gN m-2 d-1の窒素除去速度が得られた(表1)。
  5. 仮に、水稲非作付期間にも水田に湛水灌漑を行うとすれば、表1の期間別休耕田の除去速度を適用して硝酸性窒素除去可能量が試算できる。9〜11月、12〜3月、4〜5月の硝酸性窒素除去可能量は、海岸低地部では硝酸性窒素流出量に達しない場合があるが、内陸部ではすべての期間において流出量を上回る(表2)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 水田・休耕田を活用した水質浄化対策立案の基礎資料として活用できる。
  2. 茶園からの硝酸性窒素流出量には大雨時の流出量を含まない。
  3. 水稲非作付期間の硝酸性窒素除去速度は十分に湛水状態が維持された場合の値である。

[その他]
 研究課題名 : 水田・休耕田の土壌タイプ別窒素除去能の解明、茶園排水浄化のための土地利用図の作成
 予算区分  : 国補(指定試験)
 研究期間  : 1999〜2003年度、2002〜2003年度
 研究担当者 : 新良力也、渥美和彦、宮地直道
 発表論文等 : 1)渥美ら(2002)日本砂丘学会誌48(3):129-138

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