畑土壌からの嫌気的な亜酸化窒素発生に脱窒菌以外の微生物が関わっている


[要 約]
 アセチレン阻害法によって畑土壌の脱窒能を測定する際に,多量の易分解性有機物と硝酸が共存する条件では,アセチレンを添加しなくても多量の亜酸化窒素が発生する現象が認められる。この亜酸化窒素は,脱窒菌以外の微生物が亜硝酸を還元することによる。
[担当研究単位] 農業環境技術研究所 化学環境部 栄養塩類研究グループ 養分動態ユニット
[分 類] 学術

[背景・ねらい]
 アセチレン阻害法による脱窒能の測定は,アセチレンが脱窒菌の亜酸化窒素還元酵素を阻害する ことを利用して測定される。しかし,畑土壌の脱窒能を測定する際に,多量の易分解性有機物と硝酸が共存すると,アセチレン無添加区においてもアセチレン添加区に匹敵する量の亜酸化窒素が発生する現象が認められる。この現象に関わる微生物の特性を明らかにし,畑土壌での亜酸化窒素抑制技術の開発に資する。
[成果の内容・特徴]
  1. 畑土壌(灰色低地土,水田転換3年目)に豚ぷん堆肥と硝酸を加え嫌気的に培養すると,アセチレン添加区では,堆肥添加量が多いほど速やかに亜酸化窒素が発生し,培養前の硝酸のほぼ全量が亜酸化窒素へ還元される(図1)。アセチレン無添加区では,培養1日目にアセチレン添加区とほぼ同量の亜酸化窒素が発生するが,その後減少する(図1)。アセチレン無添加区における亜酸化窒素の減少は,脱窒菌の働きにより窒素ガスへ還元されたと考えられる。
  2. 培養中の無機態窒素の変化を調べたところ,亜酸化窒素発生に先立ち培養前の硝酸の約80%におよぶ亜硝酸の集積が認められ,硝酸から亜硝酸への還元と亜硝酸から亜酸化窒素への還元が逐次的に起こっている(図2)。
  3. 上記土壌に,グルコースあるいは酢酸を加えて嫌気的に培養すると,グルコース添加区では,アセチレン無添加でもアセチレン添加とほぼ同じ量の亜酸化窒素が発生し,3日目まで亜酸化窒素は減少しないので,この亜酸化窒素発生には脱窒菌以外の微生物が関わっていると考えられる(図3左)。酢酸添加区では,アセチレン無添加において1日目に少量の亜酸化窒素発生が認められるが速やかに消失し,培養後には,培養前の硝酸の約 75%が亜硝酸として集積している(図3右)。脱窒菌は亜硝酸の生成を行わないとされている。
  4. これらのことから,土壌中には,グルコースのような糖を利用して亜硝酸を亜酸化窒素へ還元する微生物が存在する。この微生物は酢酸を利用して亜酸化窒素を発生させることはない。既知の脱窒菌は酢酸を利用できるので,脱窒菌以外の微生物による亜酸化窒素発生である可能性が高い(表1)。
[成果の活用面・留意点]
  1. この微生物による亜酸化窒素発生はアセチレンの影響を受けないので,アセチレン添加とアセチレン無添加を比較することにより,この微生物による亜酸化窒素発生をある程度推測できる。
  2. 過湿条件にある畑土壌に易分解性有機物を含む未熟な堆肥を多量に投与した場合には,微細な嫌気的な場が生じ同様な現象が起こる可能性が高い。

[その他]
 研究課題名 : (各種資材等の評価による負荷軽減技術の開発)
 予算区分  : 運営費交付金
 研究期間  : 2004年度(2001〜2005年度)
 研究担当者 : 駒田充生,瀧 典明(宮城古川農試),三島慎一郎

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