クロロカテコール分解酵素の基質特異性は3つのアミノ酸によって決定される


[要 約]
 芳香族塩素化合物の微生物分解で中心的な役割を果たすクロロカテコール 1,2-ジオキシゲナーゼのクロロカテコール類に対する基質特異性は,48, 52, 73番目にあるアミノ酸によって決定される。
[担当研究単位] 農業環境技術研究所 化学環境部 有機化学物質研究グループ 土壌微生物利用ユニット
[分 類] 学術

[背景・ねらい]
 現在、PCB等のPOPs類や有機溶剤等の難分解性芳香族塩素化合物による環境汚染が懸念さ れており,これを微生物の能力により除去・防止するバイオレメディエーション技術の発展が期待されている。クロロカテコール類は,クロロ安息香酸,2,4 -D等のクロロフェノキシ酢酸類,クロロベンゼン類,PCB等の様々な芳香族塩素化合物の分解過程で生じる主要な中間代謝産物であり,これを分解するクロロカテコール分解経路は,多くの芳香族塩素化合物の完全分解に共通である()。この経路で,クロロカテコール1,2-ジオキシゲナーゼ(CCD)は,最初の反応を行い分解能を決定する重要な酵素である。そこで,CCDの基質特異性に関与する部位を明らかにすることで、分解菌の有効利用やCCDの基質特異性の改良を通して環境修復技術の発展に資するために、CCD蛋白質のアミノ酸配列を変化させた変異型酵素を作成して比較解析を行い、基質特異性に関与する部位を決定した。
[成果の内容・特徴]
  1. 2種類のCCD,3-クロロ安息香酸分解菌由来のCbnAと1,2,4-トリクロロベンゼン分解菌由来のTcbCは,アミノ酸配列において95%の高い相同性を示すが(),ジクロロカテコール(DC)類に対する基質特異性が大きく異なる。すなわち,CbnAは3,5-DCに対する分解能が高く3,4-DCに対する分解能は低いのに対して,TcbCは3,4-DCに対する分解能が高く3,5-DCに対する分解能は低い()。CbnAとTcbCの両者で異なる12ヶ所のアミノ酸を入れ替えたさまざまな変異型酵素を作成し,それらの分解能を解析した。
  2. CbnAは,N末端から48番目のアミノ酸がロイシン(L)であることにより,TcbCはこれがバリン(V)であることによって,それぞれの基質特異性が決まる(中の変異体MC31とC123T4の比較)。
  3. CbnAでは,73番目のイソロイシン(I)も3,5-DCに対する高い分解能に重要である(. CbnAとMC3nの比較)。
  4. TcbCでは,52番目のアラニン(A)も3,4-DCに対する高い分解能に寄与している(. MT7とMT3の比較)。
  5. TcbCの52番目のアラニン(A)をロイシン(L)に置換することにより,3,4-DCに対して高い分解能を示す酵素を作出できる(MT62)。
  6. 以上の結果をこれまで配列が明らかになっている他の微生物のCCDと比較したところ,そのほとんどがCbnA同様3,5-DCに対して高い基質特異性を有 し,その48番目と73番目のアミノ酸はCbnAと同じロイシンとイソロイシンであった。これらのことから,CCD群について一般に3,5-DCに対して分解能が高い原因は、48番のロイシン及び73番のイソロイシンであると考えられる。一方,TcbCは進化の過程で局所的な変異により,3,4-DCに対する高い分解能を獲得したと考えられる。
[成果の活用面・留意点]
 分解菌の有効利用やCCDの基質特異性の改良のための知見として活用できる。

[その他]
 研究課題名 : クロロ安息香酸分解菌等の分解遺伝子群の構造と機能の解析技術の開発
        (クロロ安息香酸分解菌等の分解能解析技術の開発)
 予算区分  : 運営費交付金
 研究期間  : 2004年度(2001〜2005年度)
 研究担当者 : 小川直人,藤井毅,長谷部亮
 発表論文等 : 1)Ogawa et al. Degradative Plasmids, In Plasmid Biology, 341-376 (2004)

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