間伐材から抽出された植物生育促進物質1,2-プロパンジオール


[要 約]
 国内で生産される35種類の間伐材等から精油成分混合物を抽出し,その中から植物の生育促進物質として,1,2-プロパンジオールを同定した。本成分は,精油成分混合物中に0.4%含まれ,0.01ppmの低濃度でも,植物の生育を促進する。
[担当研究単位] 農業環境技術研究所 生物環境安全部 植生研究グループ 化学生態ユニット
[分 類] 学術

[背景・ねらい]
 循環型社会を実現するための一方策として,林業由来の間伐材および刈り払いされた下草などの 有効利用が重要である。そこで,これらを原料として,水蒸気蒸留および圧搾法により精油成分を抽出し,これを調製して精油成分混合物とし,その産業利用について評価・検討している。ここでは,その一端として,本資材が作物の生育や収量等に及ぼす影響を評価するとともにその作用成分を分析し,農業利用の可能性について検討する。
[成果の内容・特徴]
  1. 国産の樹木35種の間伐材等を材料として,実用規模の加圧水蒸気蒸留装置を用いて精油成分を抽出し,これを圧搾法により抽出した成分と混合して,精油成分混合物を得た。材料中の主な樹木構成種は,ヒバ, ヒノキであり, ササ類も多く含まれる。
  2. この精油成分混合物は,80〜2000ppm(500〜10000倍希釈液)でレタス幼根伸長を促進する(図1)。
  3. 精油成分混合物100mlを,エバポレーターを用いて減圧下35℃で濃縮し,約2gの不揮発性の油状濃縮物を得た。この濃縮物は,原液換算で50〜1500ppmの濃度範囲でレタス幼根の生育促進活性を示す(図1)。
  4. この濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて分離し,生育促進物質を単離した。この物質は各種機器分析により1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)と同定した(図2)。
  5. 本物質は,0.01ppmから100,000ppm(100g/L)の広い濃度範囲で植物生育促進作用を示す(図3)。
  6. 1,2-プロパンジオールは,天然物としては,イチゴの香気成分の前駆体として報告されているが,植物の生育促進活性の報告は新たな発見である。
[成果の活用面・留意点]
  1. 1,2-プロパンジオールは,すでに食品添加物(防腐剤)として認可されている。また,抗菌・抗カビ・抗ダニ作用も報告されている。
  2. 精油成分混合物の2000〜5000倍希釈液(200〜500ppm相当)は,圃場でサラダナ,カブ,ホウレンソウ,コムギの生育を促進する効果(115〜140%)が確認されている(福岡県農試,九州大学,協力農家)。この作用は,精油成分混合物中に0.4%含有されている1,2-プロパンジオールによる効果で説明できる可能性がある。
  3. 本研究は、株式会社フィールドサイエンスとの共同研究で得られたものであり,この精油混合物は同社に注文すれば供給される。

[その他]
 研究課題名 : 導入・侵入植物の生物検定法による他感作用の検定と作用物質の同定
        (カテコール関連物質を放出する植物の導入が周辺の植物ならびに土壌環境に及ぼす影響解明)
 予算区分  : 運営費交付金,革新的技術開発[生理活性物質],重点支援研究[導入侵入植物]
 研究期間  : 2004年度(2001〜2005年度)
 研究担当者 : 藤井義晴,中島江理(JST),Zahida Iqbal(JST),平舘俊太郎,荒谷博,濱野満子((株)フイ
        ルドサイエンス)
 発表論文等 : 1)藤井ら,特願2003-95375 (2003)
               2)Nakajima et al., Plant Growth Regul., 45, 47-51(2005) 

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