昆虫文献目録「三橋ノート」の画像データベースの作成と公開


[要約]
明治時代から昭和20年代後半までに国内で出版された主要な昆虫関連図書や雑誌に現れた昆虫名とその文献の書誌情報を記録した昆虫文献目録「三橋ノート」の中から,トンボ目チョウ目(約20,000頁)の画像データベースを作成し,Web上に公開した。
[担当研究単位] 農業環境技術研究所 農業環境インベントリーセンター昆虫分類研究室,インベントリー研究官
[分類] 学術

[背景・ねらい]
 農業環境技術研究所には,当所の前身である農事試験場に籍を置いていたこともある故三橋信治氏が作成した文献目録「三橋ノート」(全474冊,推定50,000頁)が保管されている(図1)。この目録は,明治時代から昭和20年代後半までの昆虫に関する国内の主要な文献を対象とし,それぞれの文献中に現れた昆虫の学名および和名と当該文献の書誌情報を昆虫の分類群毎に整理したものである。かつては昆虫研究者や昆虫愛好家の間で広く知られ,有用な情報源として活用されていた。最近のデータベースでは入手することができない明治期以来の情報を得ることができるので,昆虫の生息分布や発生状況の変遷などを調べるうえで今日においても有用であり,また古い文献情報を必要とする分類研究においては特に利用価値は高い。長年にわたって蓄積されてきたこれらの情報は,我が国の昆虫研究の土台となった貴重なものであり,その有効活用を図るためWeb上に公開する。
[成果の内容・特徴]
  1. 「三橋ノート」全474冊,推定50,000頁のうち,トンボ目(7冊,1,223頁)とチョウ目(118冊,18,521頁)の合計約20,000頁のデジタル画像から成るデータベースを作成し,Web上に公開した(http://mitsuhashi.niaes.affrc.go.jp)。
  2. 本データベースには,トンボ類約300種,チョウ類約650種,ガ類約5,300種に関する明治時代から昭和20年代後半までの文献書誌情報(著者名,タイトル,書名,巻,号,頁,発行年など)が含まれている(図4)。
  3. 1945年以前の台湾,朝鮮半島および中国東北部の昆虫とその関連文献の情報も含まれている。
  4. 各頁に記されている主要な学名と和名をその頁のキーワードとして登録してあるので,閲覧したい分類群の学名もしくは和名を用いて掲載頁を検索することができる(図2、図3、図4)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 頁画像の和名キーワードには,現代仮名遣いを使用している。
  2. 記載されている昆虫の学名や和名は当時のものであり,現在一般に使用されているものとは必ずしも一致しない。
  3. トンボ目とチョウ目以外の部分についても,データベースに順次追加する予定である。

具体的データ


[その他]
研究課題名 : 所蔵タイプ標本等のデータベース化と昆虫インベントリーのためのフレームの構築
(所蔵タイプ標本等のデータベース化及びインベントリーのためのフレームの構築)
予算区分  : 運営費交付金
研究期間  : 2005年度(2001〜2005年度)
研究担当者 : 安田耕司,吉松慎一,中谷至伸,上田義治
発表論文等
1)安田ら,日本昆虫学会第63回大会 (2003)
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