農業環境技術研究所刊行物研究成果情報平成19年度 (第24集)

主要研究成果 8

有機性廃棄物の施用に伴うカドミウムの農地負荷量と
作物中カドミウム濃度への影響

[要約]
有機性廃棄物の施用により畑地に持ち込まれるカドミウム量(北海道では平均2.7g/ha)は、収穫等で畑地から持ち出されるカドミウム量より多いが、有機性廃棄物を5年間連用した農地でも作物中のカドミウム濃度は増加しませんでした。
[背景と目的]
家畜排泄物等の有機性廃棄物を肥料として利用することは、有機農業の促進、循環型社会の形成に寄与します。しかし、有機性廃棄物を利用するには、それらに含まれている有害物質、特にカドミウムの農地土壌への蓄積、さらには作物中のカドミウム濃度への影響を調べておく必要があります。そこで、有機性廃棄物中のカドミウム濃度と農地還元量から推定されるカドミウムの負荷量、施用土壌における作物中のカドミウム濃度について調べました。
[成果の内容]
 水産系廃棄物のうち、ホタテ中腸腺やイカ肝臓を原料とする堆肥のカドミウム濃度は、下水汚泥堆肥や家畜ふん堆肥より高い場合がありました(図1)。
 北海道において、有機性廃棄物の施用に伴うカドミウムの農地負荷量は年間3200kg程度であり、道内の農地に均等に負荷されたとすると年間2.7g/haと推定されました(図2)。畜産の盛んな熊本県において、家畜ふん堆肥の施用によるカドミウムの農地負荷量は県内平均で年間1g/haと推定されました。農地負荷量から推定される土壌Cd濃度の変化量は、作土15cm(仮比重1、1haあたり1500t)とすると0.7〜1.8μg/kgであり、土壌のCd濃度より顕著に小さいことがわかりました。
 有機性廃棄物由来の堆肥を畑地に5年間連用したとき、堆肥からのカドミウム負荷量は収穫によるカドミウムの持ち出し量を上回りました(図3)。しかし、作物中のカドミウム濃度は、堆肥無施用の対照区と同程度でした(図4)。その理由として、堆肥施用による土壌pHの上昇および土壌中の有機物量の増加によるカドミウムの不溶化が考えられました。
 このように、通常の堆肥施用に伴うカドミウム負荷量であれば、畑作物中のカドミウム濃度に影響しないことがわかりました。しかしながら、カドミウムは土壌に蓄積しやすいので、カドミウム濃度の高い水産系堆肥の連用については注意が必要です。
本研究は、農林水産省委託プロジェクト研究「農林水産生態系における有害化学物質の総合管理技術の開発」による成果です。
リサーチプロジェクト名:重金属リスク管理リサーチプロジェクト
研究担当者:土壌環境研究領域 川崎晃、箭田(蕪木)佐衣子、物質循環研究領域 三島慎一郎、駒田充生(現:(独)農業・食品産業技術総合研究機構)、
      細淵幸雄(北海道立道南農試)、中本洋・乙部裕一・松本武彦(北海道立中央農試)、古館明洋(北海道立上川農試天北支場)、
      柿内俊輔(熊本県農研セ)
発表論文等:1) 三島ら、日本土壌肥料学雑誌、77: 83-86 (2006)
      2) 川崎、箭田、分析化学、56: 1081-1087 (2007)

図表

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