農業環境技術研究所刊行物研究成果情報平成19年度 (第24集)

主要研究成果 20

土壌特性・土層構成に基づく硝酸性窒素の地下水到達時間の面的予測

[要約]
利根川流域内の農耕地を対象として、土壌特性・土層構成などのデータをもとに、硝酸性窒素の地下水到達時間を面的に予測しました。地下水面の深さや浸透水量の違いにより、地下水到達時間には約0.4〜31年と大きな違いが見られました。
[背景と目的]
農耕地から溶脱した硝酸性窒素による地下水汚染が懸念されています。しかし、硝酸性窒素が地下水に到達するにはある程度の時間を要するため、施肥管理が変わっても、その影響がただちに地下水水質の変化となって現れるわけではありません。本研究では、土壌特性・土層構成、地下水位と気象観測値をもとに、利根川流域内の農耕地(水田を除く)を対象として、硝酸性窒素の地下水到達時間の面的な予測を行いました。
[成果の内容]
 利根川流域内の農耕地には、土壌特性と土層構成が異なる多くの土壌が分布しています。ここでは、流域内に分布する土層を14種類に類型化し、水分保持・透水特性と陰イオン吸着に関わるパラメータの値を求めました。また、流域内の浅層地下水位と年間の正味浸入水量(降水量と蒸発散量の差)を、国土交通省水基本調査データと利根川水系内の気象観測値から内挿補間により求めました。これらをもとに、土層構成が既知の農耕地(水田を除く)213地点について、水分移動予測ソフトウェア(HYDRUS-1D)を使って体積含水率(土壌の体積のうち水が占める割合)の土層内分布を推定し、その結果と年間の正味浸入水量から、土壌表面に存在した水が浅層地下水面に到達するのに要する時間を求めました。さらに、遅延係数(陰イオン吸着による硝酸性窒素の水に対する移動の遅れ)の土層内分布から、硝酸性窒素の地下水到達時間を推定しました。得られた地下水到達時間は内挿補間し、流域内での面的分布を求めました。
 土層内での硝酸性窒素の下方移動速度には、年間の正味浸入水量に加えて土壌特性や土層構成が影響し、体積含水率や陰イオン吸着による遅延係数が大きい土層が厚く分布している地点では、硝酸性窒素の下方移動が遅いことが分かりました(図1)。
 降水量や土壌特性・土層構成、地下水面の深さなどの違いのために、予測した地下水到達時間には約0.4〜31年と大きな差が見られました。また、難透水性の粘土層が分布する地域では、降雨時に浸透水の水平方向への流出がみられ、地下水到達時間も短いことが分かりました(図2)。このように、硝酸性窒素の地下水到達時間には地点による違いが大きいことが明らかになりました。環境保全的な農法の地下水水質に対する効果を評価するには、これらの点を考慮することが必要です。
本研究は、農林水産省委託プロジェクト研究「自然共生」による成果です。
リサーチプロジェクト名:栄養塩類リスク評価リサーチプロジェクト
研究担当者:物質循環研究領域 加藤英孝、坂口敦、家田浩之、中野恵子(現:(独)農業・食品産業技術総合研究機構)

図表

図表

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