農業環境技術研究所刊行物研究成果情報平成19年度 (第24集)

主要研究成果 21

土壌線虫の簡易同定に役立つ画像付形質一覧表の公開

[要約]
関東北部の畑の代表的な土壌線虫(62属)の分類・同定に有用な形質項目を一覧表に取りまとめ、公開しました。そのうち、29属の線虫については、特徴を捉えた鮮明な画像を見ることができます。
[背景と目的]
わが国の農耕地の土壌線虫相は植物寄生性線虫を除いてほとんど明らかにされておらず、同定に利用できる資料もあまりありません。そこで、茨城県の畑圃場から見出されるほぼすべての土壌線虫をリストアップし、それらの形態的特徴を属(一部科)レベルの同定に利用できるよう形質一覧表にしました。
[成果の内容]
土壌線虫の形質一覧表は農業環境技術研究所(農環研)のWebサイトからアクセスできます(URL:http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/inventry/nemapics/)。この形質一覧表には、研究所構内の不耕起堆肥連用ほ場の12年にわたる調査で見出された58属のほか、茨城県で見出される植物寄生性線虫4属を加えた62属(一部科レベル)の線虫を取り上げました(図1)。また、同定に役立つ特徴を捉えた鮮明な顕微鏡写真(29属)を表にリンクさせ、表示できるようにしました(図2)。本形質一覧表は、体の大きさなどの記述では主として成虫を対象としています。同じ属でも成虫と幼虫で形態が著しく異なるシストセンチュウやネコブセンチュウ、あるいは形態の異なる耐久態幼虫を生じるPristionchus属線虫などは成虫や耐久態幼虫を区別して扱いました(図1)。また、分類学で重要視される、線虫の頭部、口腔の形態、飾り、食道や尾部など、40〜100倍程度の低倍率でも観察できる体の概形や大きさ、プロポーションを示しています。したがって、低倍率での観察することが多い土壌線虫の群集構造の解明の際などに有効です。今後、水田、畑、草地などの主要線虫を追加するとともに、未掲載の線虫画像も拡充して行きます。
リサーチプロジェクト名:環境資源分類・情報リサーチプロジェクト
研究担当者:生物生態機能研究領域 荒城雅昭

図表

図表

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