農業環境技術研究所 刊行物 研究成果情報 平成19年度 (第24集)

はじめに

 ここに研究成果情報平成19年度版を皆さんのお手元にお届けいたします。私たちの研究所は、平成18年度を開始年とする第II期中期目標期間における研究計画において、農業生産環境の安全性を確保するための基礎的な調査および研究に重点を置き、3つの柱となる課題、すなわち、1)農業環境のリスクの評価及び管理技術の開発、2)自然循環機能の発揮に向けた農業生態系の構造・機能の解明と管理技術の開発、3)農業生態系の機能の解明を支える基盤的研究を掲げ、その目標の達成に向けて邁進しています。
 農業は、周知のように、生態系(エコシステム)を制御しつつ活用して食料、飼料、代替エネルギーなどを生産する産業です。そこで行われる生態系制御では、人間の利益のために、種の選別、病害虫の防除、除草などのように、たくさんの動植物種を制御(生物制御)するとともに、耕耘、加温、被覆、灌漑などのように、生態系の物的要素を改変(物理制御)します。農業の本質であるこの生態系制御に伴う環境負荷の構造を明らかにするとともに、生態系を健全に活用する持続的農業の実現のために、その負荷の低減を図る知識を獲得することが必要不可欠です。
 第II期中期目標期間における研究計画が重点を置く「農業生産環境の安全性の確保」においては、ここに述べた農業の本質に関わる根源的な問題認識と併せて、私たちをめぐる21世紀の大状況としてある地球環境変動との関係をもその枠組みに取り入れています。
 本書の目次を一瞥してお気づきのように、平成19年度に実施した研究の成果の中から主要なものを選定し掲載している本成果情報は、もとより、農業生産環境のリスク評価、リスク管理に関わる成果が多く取り上げられています。ここには、「主要研究成果」と「普及に移しうる成果」に分けて掲載していますが、「普及に移しうる成果」は「主要研究成果」の中から、次に述べる位置づけに合致するものとして選定した成果です。すなわち、国、県あるいは市町村行政部局、検査機関、民間、他独法や大学など試験研究機関、さらには農業現場などで活用されることが期待され、研究所としても積極的に広報活動および普及活動を行なうべき重要な成果であると位置づけたものです。これらの中には新聞などマスコミに大きく取り上げられたものもあります。本書に採録されている成果が、「知識の創造」に寄与することはもとより数々の局面において役に立つものと確信しています。
 本書が、皆様にとって有意義な情報になることを願うとともに、皆様からの忌憚のないご意見を得て、私たちの研究が更に深化する契機となることを期待しています。

 平成20年3月

独立行政法人 農業環境技術研究所
理事長 佐藤 洋平

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