農業環境技術研究所 > 刊行物 > 研究成果情報 > 平成20年度(第25集)

普及に移しうる成果 6

明治時代初期の関東地方の土地利用を
インターネットで閲覧できるシステムを開発

[要約]
約120年前の明治時代初期に作製された地図「迅速測図」を、電子的地図にする手法を開発し、インターネット上で閲覧、利用するための「歴史的農業環境閲覧システム」(HABS)を、オープンソース・ソフトウェアを使用して開発・公開しました。
[背景と目的]
「迅速測図」は、明治時代の初期に作製された地図です。特に関東地方を対象に作製されたものは地目毎に彩色され、樹種等も書かれているので、120年前の土地利用や景観を知るための貴重な資料です(図1)。この地図は農業・農村研究や里地里山の保全活動の基礎的資料などとしての活用が期待されます。そこで、インターネットを利用して、この迅速測図を広く一般に公開するためのシステムを開発することとしました。
[成果の内容]
 関東平野を対象に作られた迅速測図は紙に印刷されており、全部で約900枚あります。まずこの地図をデジタル化し、一枚の大きな画像に合成する方法を開発しました。さらに、地理情報システム(GIS)というソフトウェアを使って位置情報を与え、電子的地図にしました。この電子的地図では現在の地図とのずれが見られる箇所もありますが、地域の土地利用の変化を見るには十分な精度を持ちます。次に、この電子的地図をインターネットで公開するために、無料で入手でき、改良が可能なオープンソースGISソフトを使用して、「歴史的農業環境閲覧システム」(Historical Agro-Environmental Browsing System、略称:HABS)を構築しました。このシステムは、インターネットに接続していれば誰でも利用できます。利用するには、インターネットの検索サービスで「歴史的農業環境閲覧システム」というキーワードで調べるか、直接「http://habs.dc.affrc.go.jp/」と入力し、Webサイトにアクセスします。図2がHABSの初期画面です。HABSは、Webブラウザーだけで120年前と現在の位置や土地利用を比較することができます。図3は土浦周辺を表示した場合です。また、「GoogleEarth™」上に迅速測図を表示することもでき、より詳細な土地利用の比較も可能です。本システムはオープンソース・ソフトウェアで構築されているので、システムの再配布や他の目的での利用が可能です。これまでに、土地利用変化の解明などに利用されています。さらに今後、過去の土地利用と現在の生物多様性の関係の研究や、農耕地の特性評価の基礎的資料としての活用が期待されます。
リサーチプロジェクト名:農業空間情報リサーチプロジェクト
研究担当者:生態系計測研究領域 岩崎亘典、デイビッド スプレイグ
発表論文等:1) 岩崎ら、GIS−理論と応用,17:83-92 (2009)
                      2) 岩崎ら、農業環境技術研究所プレスリリース(平成20 年4 月16 日発表)
                      3) Sprague et al., Int. J. Geogr. Inf. Sci., 21:83-95 (2007)

図表


図表

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