農業環境技術研究所 > 刊行物 > 研究成果情報 > 平成20年度 (第25集)

主要研究成果 3

ズッキーニを利用した土壌残留ディルドリンのファイトレメディエーション

[要約]
ディルドリン高吸収植物ズッキーニによる土壌浄化の効果をポット栽培実験によって検討した結果、処理土壌で栽培したキュウリの果実中濃度を40〜60%低減させました。ズッキーニによるファイトレメディエーションはディルドリン残留土壌の修復技術として有望です。
[背景と目的]
殺虫剤ディルドリンはPOPs条約(環境省HP:http://www.env.go.jp/chemi/pops/index.html 参照)の対象物質ですが、土壌中での消失速度が遅く、日本では農薬登録の失効(1975年)から30年以上経過した現在でもキュウリへの残留が問題になっています。そこで、土壌修復技術のうち、高吸収植物を用いたファイトレメディエーションについて、その効果を検討しました。
[成果の内容]
 ディルドリン残留土壌で17科32作物を生育させ、ディルドリン吸収量を比較したところ、ウリ科(7属11種)はおしなべて吸収能が高く、他の16科ではその能力が極めて低いことがわかりました(図1)。ウリ科の中ではカボチャ属の吸収能力が高く、中でも最大の吸収能を示したズッキーニ(Cucurbita. pepo L. cv. ブラックトスカ)をディルドリン高吸収植物として選抜しました。
 2種類のディルドリン残留土壌(黒ボク土および褐色低地土)を15Lポットに充填し、ズッキーニを4作栽培したところ、土壌中のディルドリン濃度は栽培を重ねるごとに低下し、4作栽培後の低減率は黒ボク土で30%、褐色低地土で40%となりました(図2)。ズッキーニ栽培処理土壌でキュウリを栽培したところ、果実中のディルドリン濃度は黒ボク土で40%、褐色低地土で60%低減しました(図3)。以上のように、ズッキーニによるファイトレメディエーションの効果がポット栽培試験によって確認できました。土壌から吸収されたディルドリンはズッキーニ植物体中で分解されないため、収穫残さの処理等解決すべき問題は残されていますが、ズッキーニを利用したファイトレメディエーションはディルドリン残留土壌の修復技術として有望であり、現在、圃場試験による浄化効率の評価等実用化に向けた取り組みを行っています。
本研究は、農林水産省の委託プロジェクト研究「農林水産生態系における有害化学物質の総合管理技術の開発」による成果です。
リサーチプロジェクト名:有機化学物質リスク評価リサーチプロジェクト
研究担当者:有機化学物質研究領域 大谷卓、清家伸康
発表論文等: 1) Otani et al., Soil Sci. Plant Nutr., 53: 86?94(2007)
2) 大谷、清家、農及園、83: 449-456(2007)

図表

図表

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