農業環境技術研究所 > 刊行物 > 研究成果情報 > 平成21年度 (第26集)

普及に移しうる成果 1

水浄化を目的とした微粉末活性炭タブレットの開発

[要約]
水中の有害な有機化学物質を強力に吸着する微粉末活性炭をタブレット(錠剤)化し、簡単・迅速・安全に水を浄化する技術を開発しました。
[背景と目的]
近年、水の汚染問題が深刻化する中で良質な水を大量に確保することは世界的に重要な課題となっています。残留性有機汚染物質(POPs)、工業廃棄物、農薬などは、その汚染源に留まらずに拡散し、地下水、井戸水、湖水、河川などの幅広い水系に悪影響を及ぼす危険性があります。そのため、簡便、高効率かつ安全な水浄化技術が強く求められています。そこで、安全で高性能の微粉末活性炭を使いやすいようにタブレット化した上で、新規水浄化技術としての有効性を調べました。
[成果の内容]
微粉末活性炭は有害な有機化学物質に対して優れた吸着性能がありますが、粉じんが舞いやすいので、注意して使用する必要があります。さらに、微粉末活性炭は水表面に浮いて流れてしまうので、浄化したい場所への適用も困難でした。そこで、投入時に細かな活性炭の舞い上がりがなく、容易に水底に沈み、その後すみやかに水中に分散する微粉末活性炭タブレットを開発しました。この技術により、水中の様々な有害な有機化学物質を強く吸着して、水を浄化できます。以下、微粉末活性炭タブレットの主な特徴を示します。
  1. 様々な形や大きさに整形することができるので、様々な場面に応じて使い分けることができます(図1)。
  2. 微粉末活性炭は、比表面積が大きく、高い吸着性能を持ち、さらに重金属やヒ素を含まないので、環境負荷が極めて低い安全な素材です(表1)。
  3. 水底に沈んでから約10〜20秒の短時間で水中に速やかに崩壊・分散し、微粉末活性炭の成分を調整することで、その分散速度も変えることができます(図2)。
  4. 微粉末活性炭タブレットは吸着力が強く、水をかき混ぜることなく、色素を吸着し透明にすることができます(図3)。即ち、水を簡単に浄化できます。
  5. 水中に添加した255種の農薬を30分の短時間で約80〜100%吸着することができます(図4)。
  6. 底質から水中に溶け出す残留性有機汚染物質(POPs)に対する吸着性能を半年間以上(現在まで)保持します(図5)。
 本技術は、農業・畜産排水、工業排水をはじめ、河川、湖沼、井戸などの水を浄化できる技術として期待されています。
リサーチプロジェクト名:有機化学物質リスク管理リサーチプロジェクト
研究担当者:有機化学物質研究領域 殷熙洙、馬場浩司、柴田康行((独)国立環境研究所)、佐々木裕子(元:東京都環境科学研究所)、崔宰源(韓国水資源公社)、金倫碩(韓国水資源公社)、福井博章(東京シンコール株式会社)

図表

図表

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