農業環境技術研究所 > 刊行物 > 研究成果情報 > 平成21年度 (第26集)

主要成果 8

ナギナタガヤのアレロパシーとそのアレロケミカルの同定

[要約]
ナギナタガヤは生物検定法で強いアレロパシー活性を示しました。そのアレロケミカル として、(-)-3-hydroxy-β-ionone と (+)-3-oxo-α-ionol を検出しました。
[背景と目的]
ナギナタガヤ(Vulpia myuros C.C.Gmel) は戦後に導入された外来種で、西日本のミカン園を中心に、除草剤を用いない果樹園の草生管理法として取り入れられ、広く栽培されるようになっていますが、種子が多産で、農耕地や空地等で雑草化する恐れがあります。そこで、この植物のアレロパシー活性を検定し、作用しているアレロケミカルを分析しました。
[成果の内容]
ナギナタガヤは、根から滲出する物質によるアレロパシーを検定する「プラントボックス法」(農業環境研究成果情報第8集)で、検定植物(レタス)の根の伸長阻害率が65〜84%(平均阻害率74%)となり、ヘアリーベッチに匹敵する強い阻害活性を示しました。また葉から溶脱する物質の活性を「サンドイッチ法」(同14集)で検定した結果、阻害率53〜82%(平均阻害率63%)と、やや強い阻害活性が認められました。
ナギナタガヤに含まれるアレロケミカルを、生物検定を指標にしながら分離した結果、(-)-3-ヒドロキシ-β-イオノン( (-)-3-hydroxy-β-ionone)と(+)-3-オキソ-α-イオノール((+)-3-oxo-α-ionol)が単離されました(図1)。これらの物質は矮性インゲンに含まれる植物生育阻害物質として報告されています。
これら両物質のレタス、オランダガラシ、ムラサキウマゴヤシに対する50%生育阻害濃度(EC50)は3〜10µM、イネ科のオオアワガエリ、メヒシバ、ネズミムギに対するEC50は15〜30µMであり、天然物としては強い生育阻害活性を持っています(図2)。またナギナタガヤが生育する土壌の溶液から、これらの物質が18〜34µMの濃度で検出されたことから、土壌中で他の植物に影響を及ぼしていると推定されます。
ナギナタガヤは雑草防除に有効であることが既に現地果樹園でも認められていますが、その雑草抑制効果の一部はこれらの物質の関与で説明できる可能性があります。しかし、種子が容易に再生産され、この植物自身が雑草化しやすいので、周辺生態系へのアレロパシーによる負の影響にも注意する必要があります。

リサーチプロジェクト名:外来生物生態影響リサーチプロジェクト
研究担当者:生物多様性研究領域 藤井義晴、平舘俊太郎、加茂綱嗣、加藤尚(香川大)
発表論文等:1) Kato-Noguchi, et al., Plant Growth Regulation. 60: 127-131 (2010)

図表1

図表2

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