農業環境技術研究所 > 刊行物 > 研究成果情報 > 平成24年度 (第29集)
主要成果
四国では、20年間( 1987 〜 2006 年)に、稲作地域の水稲作付面積が減少しました。このため、湛水面積が減少し、稲作地域では夏季の気温が上昇しましたが、その上昇幅は非稲作地域(森林や宅地、畑、果樹園など)に比べて、約4倍大きいことがわかりました。
水稲作付面積が減少すると夏季の湛水面積が減少するため、夏季の気温が上昇する可能性があります(図1a)。そこで作付面積の減少割合が全国平均よりも高い四国を対象に、過去20年間について、稲作地域と非稲作地域の夏季の気温の上昇量を比較しました。
本研究では、四国を5kmメッシュで覆い、1987年の時点で水田を含むメッシュを「稲作地域」、それ以外の地域を「非稲作地域」と定義しました(図2)。非稲作地域は、主に森林や宅地、畑、果樹園に相当します。そして、地球温暖化による気温上昇とは別に、2006年までの20年間に、稲作地域で水稲作付面積の減少による夏季の気温変化を推定しました。この推定では、水田面積の減少による気温上昇と地球温暖化による気温上昇とを区別する必要があります。そこで、領域大気モデル(JMA-NHM)を用いた数値実験により、水田面積を国土数値情報が示すように減少させた場合と、水稲作付面積が1987年の時点から減少しなかった場合の稲作地域の気温上昇を、それぞれ推計しました。これらの気温上昇の差をとると、地球温暖化による気温上昇が差し引かれ、水稲作付面積の減少による気温上昇だけが抽出できます。同じように、モデルを用いて、非稲作地域の土地利用変化(主に畑や果樹園の宅地化)があった場合となかった場合のそれぞれの気温上昇から、非稲作地域の土地利用変化による気温上昇を推定しました。そのうえで、稲作地域と非稲作地域の土地利用変化による気温上昇を比較しました(図1b)。
農林水産省の『作物統計』によれば、2006年の全国の水稲作付面積は1987年に比べて20%減少しました。一方、四国では同じ期間に作付面積面積が24%減少しました(図2)。これは都市化や耕作放棄によるものと考えられます。今回の推定から、こうした水田(湛水)面積の減少により、地球温暖化とは別に、稲作地域では、7〜8月の日最高気温が過去20年間に + 0.13 ℃上昇していたことが分かりました(図3)。一方、非稲作地域の土地利用変化による気温上昇は+0.03℃にとどまりました。稲作地域は、非稲作地域よりも約4倍大きな土地利用による気温上昇があったことが明らかになりました。
本研究は文部科学省気候変動適応研究推進プログラム 「流域圏にダウンスケールした気候変動シナリオと高知県の適応策」 の成果です。
リサーチプロジェクト名: 食料生産変動予測リサーチプロジェクト
研究担当者:大気環境研究領域 飯泉仁之直、西森基貴、吉田龍平(現:東北大学)
発表論文等: 1) Yoshida et al., Geophys. Res. Lett., 39:L22401 (2012)