農業環境技術研究所 > 刊行物 > 研究成果情報 > 平成24年度 (第29集)
主要成果
各種「生分解性プラスチック(生プラ)」 の酵素による分解性を調べる簡便な方法を作りました。色素を混ぜ固めた生プラを分解酵素で処理することで、溶出する色素の濃度から生プラの分解性を評価することができます。
生分解性プラスチック(生プラ)製品は、従来のプラスチック製品と異なり、使用後に微生物が産生する酵素によって完全分解され、環境中に残留しません。生プラ製品の開発には、現場での耐久性と分解性に即した生プラの選抜が必要です。また、使用済みの生プラ製品を酵素処理で急速分解できれば、使用後に速やかに土に返すことができます。そこで、酵素による生プラの分解性を簡便に評価する方法を開発しました。
本研究で開発した、生プラ分解性の簡単な評価法は、以下の通りです。
有機溶媒に溶解した生プラに色素(ナイルブルー)を混合し、窓付きスライドガラス(顕微鏡観察で用いるもの)の表面に約 0.27 mg の生プラ相当量を滴下後、固化させます。生プラの表面に、生プラ分解酵素(酵母 Pseudozyma antarctica 由来の PaE など)の溶液を滴下すると、生プラの分解に伴って溶液内に色素が溶け出します。一定時間反応後酵素溶液を回収し、溶出した色素の量を、600 nm の吸光度で測定します(図1a)。
色素溶出量から生プラ分解性を簡単に評価する本手法は、図2 に示した2つの知見を活用しています。すなわち、生プラ分解酵素(PaE)濃度の増加に伴い、色素を入れた生プラから色素が溶出すること。一方、色素を入れずに成形した生プラが、PaE 濃度の増加に伴い分解されることを、炭素の溶出量から確認していることです。本手法では、基質特異性が異なる酵素の生プラ分解性の違いを調べることもできます(図1b)。
国際規格に準じた生プラ分解性の評価法は、密閉容器に入れた堆肥中から発生するガスの量を測定するため、時間と手間がかかります。本手法では、少量の生プラと分解酵素があれば、普及型の吸光度計を用いて、短時間で生プラの分解性を判定できます。さらに、自然環境中での生プラ分解性の推定や、生プラの分解を酵素で促進させる技術の開発を効率良く進めることができます。
本研究の一部は JSPS 科研費萌芽 「植物常在酵母の葉面接着戦略の解明」 による成果です。
リサーチプロジェクト名:情報化学物質・生態機能リサーチプロジェクト
研究担当者:生物生態機能研究領域 北本宏子、篠崎由紀子(現:JSPS 特別研究員)、吉田重信
発表論文等:1) Kitamoto et al. AMB Express 1:44 (2011)
2) Shinozaki et al. Appl. Microbiol. Biotechnol. 97:2951-2959 (2013)
3) Shinozaki et al. J. Biosci. Bioeng. 115:111-114 (2013)

