農業環境技術研究所 > 刊行物 > 研究成果情報 > 平成24年度 (第29集)
主要成果
土壌の種類別に作付された作目とその肥培管理実態に加え、土壌中の可給態の肥料成分の量を実態調査から求め、データベースにとりまとめました。このデータベースは土壌情報の一つとして環境影響評価のためのモデルに利用できます。
作物栽培ではしばしば過剰な施肥による水質汚濁などの環境影響が問題となっています。また、そのような施肥のもとでは、土壌が栄養過多になっている場合があります。そこで土壌環境基礎調査(定点調査)結果を使って、土壌の種類・作物別に肥培管理の状況と作物の生産量、その管理が行われている土壌に含まれる可給態の肥料成分量を求め、データベース化しました。このデータベースが行政機関・試験研究機関で使われることにより、農地由来の環境影響評価の精緻化が期待されます。
農水省補助事業として都道府県が 1979 年から 2003 年にかけて5年ごとに5回、のべ 8 万 5 千点以上で実施した土壌環境基礎調査(定点調査)および土壌環境モニタリング調査の結果の提供を受け、作土層中の可給態窒素・可給態リン・交換性カリウムの量を求め、また同時にそこで栽培されている作物とその肥培管理状況に関して取りまとめました(図1)。この時、土壌については16の土壌の種類別、作物については水稲・畑作物(野菜以外)・野菜・果樹・茶・飼料作物・牧草の7群に分けています。肥培管理に関しては、化学肥料と堆肥による窒素・リン・カリウムの施用量、土壌改良資材のリンの施用量をそれぞれ求めました。作物の生産量は、含有する窒素・リン・カリウムの量で示しています。求めた結果は、Microsoft Excel 2010 のワークブックにとりまとめています(図2)。ワークブックは(独)農業環境技術研究所のHPで公開しておりダウンロード可能です。
このデータベースから灰色低地土と多湿黒ボク土での水稲の肥培管理を見ると、多湿黒ボク土では堆肥の施用が多いにもかかわらず、土壌中の可給態窒素量は概ね同じ程度であることが見てとれます(図3)。このように土壌の種類によって同じ作物でも肥培管理が違う場合があります。また、同じ黒ボク土で栽培する野菜以外の麦・芋など畑作物よりも、野菜では、堆肥・化学肥料の施用量が多いにもかかわらず、可給態窒素の量にはあまり違いがありません(図3)。異なる土壌では異なる肥培管理がされていますが、肥培管理の違いが可給態窒素等の土壌の肥沃度に必ずしも反映されないことが定量的に示されました。
リサーチプロジェクト名:化学物質環境動態・影響評価リサーチプロジェクト
研究担当者:物質循環研究領域 三島慎一郎、江口定夫、農業環境インベントリセンター 白戸康人
発表論文等: Mishima et al. ESAFS 10 (2011)


