農業環境技術研究所刊行物研究成果情報平成25年度 (第30集)

平成25年度主要成果

水稲の光合成速度と気孔開度の比例関係は野外群落条件でも成立する
−水田の水利用や収量の予測に貢献−

[要約]
これまで個葉を対象とする室内実験で確認されていた光合成速度と気孔開度の比例関係が、野外の群落条件下においても時間や季節によらず成立することを、水稲群落の精緻なガス交換計測によって初めて明らかにしました。
[背景と目的]
作物は日射や湿度等の変化に応じて気孔の開度(気孔コンダクタンス)を調節することで葉温、水分損失、光合成速度のバランスを保っています。環境と気孔コンダクタンスの関係は、これまで温室等の制御された条件で、主に個葉を対象に調査されてきました。しかし、圃場では作物は群落を形成していることから、群落全体としての振る舞いを理解することも重要です。本研究は、水稲を対象に、作物の生産性と水利用を理解する上で重要な光合成速度と気孔コンダクタンスの比例関係が、個葉のみならず野外の群落条件下でも成立するのかを調べました。
[成果の内容]
茨城県つくば市の水田で計測した二酸化炭素交換量、蒸発散量、葉面積指数等のデータと丸山・桑形が開発した群落熱収支モデル逆算手法(注)を用いて、水稲群落の平均的な気孔コンダクタンスと光合成速度を連続的に推定し、両者の関係性を解析しました。
両者には制御条件下の個葉の場合と同程度の強い比例関係が確認され、この関係が群落条件下でも成立する頑健なものであること(図1)、ただしその傾き(Ball-Berryパラメータ)は季節変化する可能性があることが明らかになりました(図2)。さらに、光合成速度の最大値の季節変化は葉身窒素量でよく説明できることもわかりました(図3)。日々の光合成速度は日射量の影響を最も強く受けることから、気孔コンダクタンスの変動要因としては、数分から数日のスケールでは日射量、より長期的には葉身の窒素量が重要であることが、群落条件下で確認されました。本成果は、気孔コンダクタンスのモデル化を通じて、水稲群落の温度環境や収量、水田水利用等の予測精度の向上に大きく貢献します。
(注)Maruyama and Kuwagata, Agric. For. Meteorol., 148: 1161-1173 (2008)
本研究の一部は、農林水産省委託プロジェクト研究「農林水産分野における地球温暖化対策のための緩和および適応技術の開発」、JSPS科研費22248026による成果です。
リサーチプロジェクト名:作物応答影響予測リサーチプロジェクト
研究担当者:大気環境研究領域 小野圭介、桑形恒男、間野正美(現:千葉大学)、滝本貴弘、長谷川利拡、宮田 明、物質循環研究領域 林 健太郎、丸山篤志((独)農研機構・中央農研)
発表論文等:1) Ono et al., Global Change Biology, 19: 2209-2220 (2013)

図1 水稲群落における気孔コンダクタンスと光合成速度の関係

図2 図1の分布に当てはめた回帰直線の傾きの季節変化

図3 葉身窒素量と最大光合成速度の関係

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