平成25年度主要成果
世界の主要生産地域における過去25年間の主要作物の推定収量データベース(全球作物収量データベース)
- [要約]
- 世界の主要生産地域における1982〜2006年の主要4作物(トウモロコシ、コメ、コムギ、ダイズ)の推定収量データベースを約120kmのメッシュごとに整備しました。
- [背景と目的]
- 世界を対象とする作物収量データは、国連・食糧農業機関(FAO)の国別統計値に限られ、過去の収量及びその年々変動の詳細な地理分布はこれまで分かりませんでした。しかし、高解像度メッシュ化が進む気象データと対応させて地球温暖化の影響などを理解し、今後増産が期待できる地域を推定したりするには、収量の年々変動データのメッシュ化が不可欠です。そこで、FAOの国別収量統計値と衛星観測から得られた作物別の植生指数を組み合わせて、約120kmのメッシュごとに、主要4作物の1982〜2006年の推定収量データを整備しました。
- [成果の内容]
- FAOの国別収量統計値と衛星観測(NOAA/AVHRR)から得られた作物別の植生指数(純一次生産量)、作物別の栽培地域分布・栽培暦を組み合わせ、メッシュごとの収量を1982〜2006年について推定し、「全球作物収量データベース」として整備しました。メッシュサイズは、気象庁の長期再解析気象データと同じ(約120km)です。
- 本データベースを利用することで、国の中でも収量の地域差があること(図1)や、近年、いくつかの地域で収量の変動幅が増加し、収量が不安定化していること(図2)などが分かります。また、メッシュごとの推定収量は、別途、収集した主要生産地域23カ国の郡別(国によっては州別)の収量統計値と比較しました。その結果、対象作物が広く栽培されているメッシュでは信頼性の高い推定値が得られましたが、対象作物があまり栽培されていないメッシュでは信頼性が高くないことが分かりました(図3)。本データベースの収量推定値は、主要生産地域を解析する場合に有用であり、小規模な生産地域の解析には、さらに検証したうえで使用するなどの注意が必要です。利用希望者は研究担当者までお問い合わせください。
本研究は環境省地球環境研究総合推進費「気候変動リスク管理に向けた土地・水・生態系の最適利用戦略」による成果です。
リサーチプロジェクト名:食料生産変動予測リサーチプロジェクト
研究担当者:大気環境研究領域 飯泉仁之直、石郷岡康史、横沢正幸(現:静岡大学)、生態系計測研究領域 櫻井玄
発表論文等:1) Iizumi et al., Glob. Ecol. Biogeogr., 23: 346-357 (2014)