農業環境技術研究所刊行物研究成果情報平成25年度 (第30集)

平成25年度主要成果

世界の食料生産予測に利用できる過去50年間の全球日別気象データベース(GRASP)

[要約]
世界のほぼすべての陸域の食料生産予測に利用できる1961〜2010年の日別気象データベースを約120kmのメッシュごとに整備しました。作物モデルの入力値として必要な日最高・最低・平均気温、降水量、日射量、相対湿度、水蒸気圧、風速の8気象要素を収録しています。
[背景と目的]
世界人口の急増により、食料を毎年、安定的に供給する必要性が高まっています。作物の生育期間中の気温や降水量といった気候条件は、食料生産の主要な変動要因です。主要な作物生産地域における短・長期の気象・気候予測を豊凶予測に活用するうえでは、過去の気象・気候情報が不可欠です。しかし、世界の気象観測統計値の多くは月別値で、要素も気温・降水量等に限られており、作物モデルの入力値として必要な気象要素を日別で入手することは、これまで困難でした。そこで新たに、作物モデルに入力可能な全球・長期間の日別気象値の整備を行いました。
[成果の内容]
平均気温や降水量だけでなく、多くの作物モデルの入力値である日最高・最低気温、日射量、相対湿度、水蒸気圧、風速の計8気象要素を収録した全球日別気象データベースGRASP(The Global Risk Assessment toward Stable Production of food)を作成しました。このデータベースにより、8要素の1961〜2010年の日別値が約120kmのメッシュごとに利用可能です(図1)。
気象庁・電力中央研究所や欧州中期予報センターが公表している再解析値(過去の大気や海洋の循環場・気温場などを、当時の観測デ-タと最新の数値予報モデルを使ってコンピュータで再現したもの)は全球の日別気象値ですが、数値モデルによる系統的な誤差があり、そのままでは作物モデルの入力値として利用できません。そこで、再解析値を月別観測値で補正して誤差を除去(バイアス補正)した日別値を作成しました(図2)。メッシュごとの日別値は、別途、収集した世界の地点観測値やメッシュ降水量データと比較して誤差が小さく、その信頼性が確認されています。
なお本データセットは研究者を対象に公開いたしますので、利用の際には下記の研究担当者とご相談下さい。
本研究は環境省地球環境研究総合推進費「気候変動リスク管理に向けた土地・水・生態系の最適利用戦略」による成果です。
リサーチプロジェクト名:食料生産変動予測リサーチプロジェクト
研究担当者:大気環境研究領域 飯泉仁之直、西森基貴、横沢正幸(現:静岡大学)
発表論文等:1) Iizumi et al,, J. Geophys. Res., doi10.1002/2013JD020130

図1 本データベースGRASPの対象地域と概要

図2 本データベースGRASPの構築手法

目次へ戻る   このページのPDF版へ