農環研ではこれまで、主に過去のコメ収量・品質変動を再現できる統計モデルによる将来予測を行ってきましたが、今回、作物の生長過程を再現できるイネ生育・収量モデルによる将来のコメ生産変動予測を併せて行いました。
研究担当者: 国立研究開発法人 農業環境技術研究所 大気環境研究領域
上席研究員 西森 基貴
TEL 029-838-8236
主任研究員 石郷岡 康史
TEL 029-838-8202
主任研究員 飯泉 仁之直
TEL 029-838-8435
図1 平均気温の上昇度に対する地域平均コメ収量の変化予測
気候変化シナリオ34ケースについての広域コメ収量予測モデルによる推計結果をプロットしました(小さな赤丸)。コメ収量の変化は、1981~2000 年における暖候期( 5~10月)平均気温に対する上昇度として示しています。黒丸で示した点は、気温上昇無し( 0 ℃)および上昇度 1.5 ℃から上昇幅 1 ℃ごとの収量平均値を示し、実線で結んでいます。
図2 適応策をとらない場合のコメ推定収量の分布(2081~2100年平均)
気温上昇が大きい気候モデル(MIROC3.2-hires)と温室効果ガス排出シナリオ(SRES-A1b)(*6)を用いて予測した結果で、図中の値は 1981~2000 年における平均の値を 100 とした相対値を示しています。
図3 適応策をとらない場合のわが国のコメ全生産量と品質低下リスクの予測
気候シナリオは 図2 の予測と同じものを用い、全生産量と高温による品質低下のリスクについて、1981~2000 年における値を 100とした場合の 20 年毎の推移の相対値で表しました。高温による品質低下のリスクは、出穂後 20 日間の日平均気温が 26 ℃以上の値を累積した HDD(*7)という指標で評価し、リスク低(HDD<20:緑),中(20<HDD<40:黄),高(40<HDD:赤)で表しました。
図4 適応策をとらない場合の九州地方の一等米比率の変化予測
2つの異なる温室効果ガス排出シナリオ(上段: SRES-A1b、下段: SRES-A2)(*6)、9つの異なる気候モデル(横軸に略号で示す)を用いて計算した結果で、2046~2065 年および 2081~2100 年における変化を、1981~2000 年平均との比較として百分率で示しました。いずれの排出シナリオおよび気候モデルを用いた結果も変化は負となり、一等米比率の減少することが示されました。