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平成27年度主要成果
水田からの温室効果ガス排出量の測定に広く使われる「手動チャンバー法」を包括的に解説した手引き書を作成し、国際的な標準ガイドラインとして公表しました。排出削減策の開発・評価に必要なデータの正確な相互比較の実現に大きく貢献します。
水田土壌は温室効果ガスであるメタン(CH4)や一酸化二窒素(N2O)の排出源です。これらのガス排出量の測定には、手動で設置するチャンバーを用いる方法が一般的です(図1)。この手法に関するマニュアル類は、1990年代に数点が公表されましたが、その後は主立ったものはなく、研究者は経験的に測定方法を確立してきました。本研究では、水稲を栽培する様々な地域で利用可能なガイドラインの作成を目的としました。
本ガイドラインは、政府間の合意に基づく国際研究ネットワーク「農業分野の温室効果ガスに関するグローバル・リサーチ・アライアンス(GRA)」水田研究グループ(http://globalresearchalliance.org/research/paddy-rice/)からの要請に基づいて作成され、2015年9月の同グループアジア・サブグループ会合において承認されました。ウェブサイト(http://www.niaes.affrc.go.jp/techdoc/mirsa_guidelines.pdf)から無料で閲覧、ダウンロードできます。本ガイドラインの最大の特徴は、最先端の科学に基づく画一的な測定方法を提示するのではなく、各地域の事情(実験器材の調達の可否など)に応じて測定が行われることを想定して記述されていることです。
本ガイドラインは、「推奨される方法」および「現状の問題点」に関する要約と7つの章から構成されます(図2)。2章から7章では、準備段階の「実験設計」から測定終了後の「データの解析」までを順を追って網羅的にカバーしました。また、日本における長年の測定研究経験から得られたコツを随所に交えることで、測定者の技術向上を図れる内容になっています。
本ガイドラインの利用により、現行の科学として必要十分な精度で水田から排出される温室効果ガスの排出量を把握できるとともに、排出削減策の定量評価が可能になります。
本研究は農林水産省委託プロジェクト研究「気候変動に対応した循環型食料生産等の確立のためのプロジェクト(アジア地域の農地における温室効果ガス排出削減技術の開発)」による成果です。
リサーチプロジェクト名:温暖化緩和策リサーチプロジェクト
研究担当者:物質循環研究領域 南川和則、常田岳志、須藤重人、研究コーディネータ 八木一行、Agnes Padre(国際稲研究所 IRRI)
発表論文等: 1) Minamikawa et al., Guidelines for measuring CH4 and N2O emissions from rice paddies by a manually operated closed chamber method, 76pp. (2015).