農業環境技術研究所 > 刊行物 > 研究成果情報 > 平成27年度 (第32集)

平成27年度主要成果

単作田の非作付け期間における炭素収支
-つくば市内の水田の解析事例-

[要約]

つくば市内の慣行の水田において炭素フローを複数年にわたって詳細に測定し、非作付け期間の炭素収支の構造とその年々変動の要因を明らかにしました。

[背景と目的]

農耕地の炭素収支は、作物の生産性や温室効果ガスの排出と深く関わっています。農業環境技術研究所は、1999年からつくば市内の生産者水田(水稲単作)において大気と地表面の二酸化炭素交換量、ならびに収穫や施肥にともない圃場に出入りした炭素量を測定し、圃場の年間の炭素収支等を明らかにしてきました(研究成果情報第27集)。しかし、水稲単作は非作付け期間が半年以上に及ぶため、その間の炭素動態を詳細に把握することも重要です(図1)。そこで、データをさらに解析し、非作付け期間の炭素収支の構造とその変動の要因を調べました。

[成果の内容]

本研究の一部は、農林水産省委託プロジェクト研究「地球温暖化が農林水産業に及ぼす影響の評価と高度対策技術の開発」による成果です。

リサーチプロジェクト名:農業空間情報・ガスフラックスモニタリングリサーチプロジェクト

研究担当者:大気環境研究領域 小野圭介、間野正美(現:千葉大学)、宮田明、生態系計測研究 領域 井上吉雄

発表論文等:1) Ono et al., Land Degradation & Development, 26: 331–339 (2015)

図1 対象水田の非作付け期間の様子: 対象とした水田では、9月上旬にイネが収穫されたあと、複数回耕起され、4月中旬に湛水、5月上旬に移植(田植え)が行われます。収穫から1回目の耕起までの間にイネの茎葉が再生し、光合成を行います。

図2 非作付け期間の炭素収支  2004~2007年までの3回の非作付け期間とその平均について、流入を正値、流出を負値で表しました。(II)/(I)で表される見かけの分解率は、2004~2005年が 64%、2005~2006 年が79%、2006~2007年が46%となりました。

図3 図3 有機物分解速度(R0)と土壌水分(体積含水率)の関係 一定の土壌体積含水率毎に、土壌温度が0°Cであった場合の有機物分解速度(R0)を算出し、有機物分解速度の土壌水分依存性を確認しました。2004、2006 年は図中に示した値を超えると、矢印で示したように有機物分解速度は土壌水分の上昇とともに急激に低下しました。2005年は降水が少なかったため、土壌水分が高い条件が見られませんでした。

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