農業環境技術研究所知的財産権基本方針

平成27年1月27日

国立研究開発法人農業環境技術研究所

1.はじめに

国立研究開発法人農業環境技術研究所(以下「研究所」という。)は、研究所の使命をふまえ、知的財産に関わる基本的な考え方を本基本方針にとりまとめ、研究所の共通認識とする。

2.知的財産権化の理念

21世紀は知的創造の時代といわれ、知的財産の役割は大きく広がっており、研究所の研究成果についても、最大限の知的財産権化を図ることが求められている。

知的財産は、人類の知恵と工夫、そして努力の結果生み出された創作物のうち、財産としての価値を持つものを指す。科学的発見 や理論、アイディアや概念、機械、器具、材料、物質、ソフトウェア、著作物、品種、ノウハウ、キャラクター、マーク、そしてデザイン、これらはすべて知的 財産の対象となる。これらの中で、一定の要件を満たすものは、産業発展及び創作者の権利保護の観点で、特許制度等の法律により保護される。

(1) 農業を中心とする産業発展の観点

農業環境技術研究においては、単なる知識の獲得だけでなく、技術をどのように社会の役に立たせるかということが求められてい る。研究所の研究成果を社会の役に立たせるためには、研究成果が農業を中心とする産業界に円滑に技術移転・事業化され、国民へ還元されることが重要であ る。研究所の研究成果が目に見える形で使われることにより、研究所の評価が高まるとともに、産業技術力の向上等に資することとなり、経済・社会に一層の貢 献ができるようになる。

技術の知的財産権化は技術移転・事業化において必須のため、研究所の研究成果を特許等の知的財産権として保護しなければならない。

(2) 創作者の権利を保護する観点

研究所の研究成果は模倣され易く、その模倣行為は見つけにくい。よって、研究投資資金及び研究労働の対価という観点から、創作者及び研究所の研究成果を無体財産権として保護すること、即ち知的財産権化することは重要である。

3.日本国民全体の財産として研究成果を活用

研究所の研究及び開発の成果物は、研究所及び日本国民全体の財産であるとの観点から、研究所は、知的財産権の発掘、取得、保護、発信、活用を、透明性・公平性を確保しつつ、効果的、効率的に行うよう組織として対応する。

このため、知的財産権は原則的に研究所の機関帰属とする。

また、知的財産の社会への活用には、外部技術移転機関と連携して、技術移転を推進する。

4.戦略的特許取得

広くて強い特許を取得するためには、研究開発の初期の段階から戦略的な特許取得を意識することが重要である。そのため、研究 者が自発的に研究開発テーマ及びその周辺における国内外の特許取得状況や技術動向を適時調査し、その研究テーマの位置付け、その方向性を把握しておくこと が重要である。

(1) 論文/学会発表前の出願

原則的に、一度公表(意図しない漏洩も含む。)されたものは特許にならない。このため、研究者が、予稿又は論文を学会事務局 に提出する前に、領域・センター長等に知的財産権化のチェックを受けることが重要であり、新規性喪失の例外規定(特許法第30条)の適用を受けるような状 態になることはできるだけ避ける。

(2) 研究所の役割

研究所は、特許性、実用化の可能性、市場性などの出願内容を客観的に判断・評価する。質の高い特許出願のため、出願や出願審 査請求を絞込み、実施化の可能性の低い国内外の登録済みの権利の存続についても判断する。また、保証金制度等を活用し発明者へのインセンティブを付与す る。

(3) 外国での権利化

外国への特許出願については、商品化の可能性が特に高い発明について、費用対効果を考慮した上で、権利化を進めるものとする。

(4) 共同研究

産業への利用を目的とする技術開発等は、企業等の外部機関との共同研究を行うことが有効であり、研究成果は知的財産として共有することを基本として、共同研究を推進する。