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イネ品種間のカドミウムの動きの違いを観察する(動画版)

[要約]
イネは品種間で異なるカドミウム集積を示します。この集積能の違いをポジトロン放出核種107Cdを使って、リアルタイムで可視化することに世界で初めて成功しました。
[背景と目的]
冊子版を参照してください)
[成果の内容]
冊子版を参照してください)
[図表(動画)]

図1 ポジトロンイメージングシステム(PETIS)の概要

ポジトロン放出核種である 107Cd を根に与え、消滅ガンマ線を計測することで植物体内での Cd の動きをリアルタイムに可視化(イメージング)できます。

図2 根のカドミウム吸収イメージング

根のカドミウム吸収は 107Cd の投与後 10 分で見られます。カドミウム低集積品種は根に高濃度でカドミウムを蓄積するのに対し、カドミウム高集積品種は葉鞘基部(左図赤枠内)への高い集積が認められます。この過程は動画で見ることができます。

図3 穂のカドミウム集積イメージング

高カドミウム系統(B)は低集積品種であるコシヒカリ(A)に高集積品種 Jarjan が持つカドミウム遺伝子( OsHMA3 の機能欠損型)を導入した系統です。高カドミウム系統は、穂へのカドミウムの集積が著しく高まっていることが観察されます。この過程は動画で見ることができます。


本システムにより、イネ品種間でのカドミウムの挙動の違いをリアルタイムに観察することが可能となり、吸収や集積に関わる遺伝子機能を明らかにする上で、重要な情報が得られます。本研究の成果は、農環研と原子力機構との共同研究によるものです。本研究の一部は、生物系特定産業技術研究支援センターのイノベーション創出基礎的研究推進事業「食の安全を目指した作物のカドミウム低減の分子機構解明」による成果です。
リサーチプロジェクト名:有害化学物質リスク管理リサーチプロジェクト
研究担当者:土壌環境研究領域 石川覚、井倉将人、安部匡、倉俣正人、
(独)日本原子力研究開発機構 鈴井伸郎、石井里美、河地有木、藤巻秀
発表論文等:1) Ishikawa et al., BMC Plant Biol., 11:172 (2011)