プレスリリース
平成19年4月13日
独立行政法人 農業環境技術研究所

特定外来生物カワヒバリガイは霞ヶ浦湖岸の約半分まで分布を広げている

独立行政法人農業環境技術研究所は、飼養・輸入等が規制されている特定外来生物カワヒバリガイが霞ヶ浦湖岸の約半分まで分布を拡大していること、その侵入が少なくとも2004年まで遡れることを明らかにしました。

外来生物法により特定外来生物に指定されているカワヒバリガイは、1990年代に西日本に侵入した中国原産の付着性二枚貝で、侵入地域では在来生物の生息地を圧迫したり、利水施設の配管を詰まらせたりするなどの被害をもたらしています。カワヒバリガイは、2005年に関東地域の一部で生息が確認されていましたが、霞ヶ浦では生息分布の詳細や侵入時期については不明でした。霞ヶ浦は、その水が生活用水や農業用水など多くの地域で利用されているため、本種の存在はこれら利水施設に大きな影響を及ぼす“おそれ”があります。

そこで、農環研では2006年から霞ヶ浦の湖岸全域を対象としたカワヒバリガイの分布調査を行い、霞ヶ浦の約半分まで分布を広げていることを明らかにするとともに、侵入時期の推定をおこなってきました。本成果は霞ヶ浦とその周辺の利水事業におけるカワヒバリガイの被害対策を行う際の基礎資料となることが期待されています。

研究推進責任者:(独)農業環境技術研究所

理事長 佐藤 洋平

研究担当者:(独)農業環境技術研究所 生物多様性研究領域 主任研究員

水産学博士 伊藤 健二

TEL 029-838-8252

広報担当者:(独)農業環境技術研究所 広報情報室 広報グループリーダー

福田 直美

TEL 029-838-8191 FAX 029-838-8191

電子メール kouhou@niaes.affrc.go.jp

[ 成果の内容の詳細 ]

1.2006年6月から9月まで、霞ヶ浦湖岸の水深1mより浅い場所を対象に、転石などの目視と水面下の護岸に対する手探りによってカワヒバリガイの生息調査を行ったところ、90地点中41地点でカワヒバリガイの生息を確認しました(図1)。カワヒバリガイは転石の下部やコンクリート護岸の表面から多数採集されました(図2)。霞ヶ浦全体での出現頻度パターンから、カワヒバリガイは霞ヶ浦西部付近の水域から生息範囲を拡大しつつあるものと考えられます。

2.カワヒバリガイが霞ヶ浦に侵入してからの経過世代数を推定するために、2006年8月に採集したカワヒバリガイの殻長頻度分布を対象に出生時期の推定を行いました。その結果、これらの採集個体は少なくとも2つの年級群に区分されることが明らかになりました(図3)。過去に京都府宇治川で報告されたカワヒバリガイの生活史と成長速度のデータを参考にすると、これら2つの年級群はおそらく2005年と2004年に加入したものと推察されました。現在霞ヶ浦に生息しているカワヒバリガイは、おそらく2004年かそれ以前に霞ヶ浦に侵入したものと考えられます。

3.正確な侵入時期の推定にはカワヒバリガイの生活史や成長速度を霞ヶ浦で調べる必要があります。また、今後の分布拡大をモニタリングするためにも継続した調査が必要です。これらの点を解決すべく、農環研では霞ヶ浦におけるカワヒバリガイの継続的な調査研究を引き続き行っていきます。

[用語解説]

年級群: 同じ年に出生した集団

加入: ある個体群に新たなメンバーが付け加わること

[参考資料]

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