独立行政法人農業生物資源研究所中期目標
第1 中期目標の期間
独立行政法人農業生物資源研究所(以下「研究所」という。)の中期目標の期間は、平成13年4月1日から平成18年3月31日までの5年間とする。
第2 業務運営の効率化に関する事項
運営費交付金で行う事業については、中期目標の期間中、毎年度平均で、少なくとも前年度比1%の経費節減を行う。
1 評価・点検の実施
独立行政法人評価委員会(評価委員会)の評価結果は、資源配分、業務運営等に適切に反映させる。評価委員会の評価の効率的かつ効果的な実施に資するため、研究所自らにおいても、運営状況、研究成果について外部専門家・有識者等を活用しつつ、業務の点検を行う。また、研究職員については、公正さと透明性を確保した業績評価を行い、評価結果は研究資源配分等に反映させる。
2 研究資源の効率的利用
外部資金の獲得、研究資源の充実・効率的利用、施設機械の有効利用等を図る。
3 研究支援の効率化及び充実・高度化
研究業務の高度化に対応した高度な専門技術・知識を有する者を配置する等、研究支援業務の効率化、充実・強化を図る。また、必要に応じ、外部委託等の活用を図る。
4 連携、協力の促進
他の独立行政法人との役割分担に留意しつつ、研究目標の共有、共同研究、人的交流の促進を行い、独立行政法人全体としての農林水産業等に関する研究水準の向上を図る。また、研究の効率的な実施のため、国公立機関、大学、民間、海外機関、国際機関等との共同研究等の連携・協力及び研究者の交流を行う。
5 管理事務業務の効率化
事務処理の迅速化、簡素化、文書資料の電子媒体化等による管理事務業務の効率化を行う。
6 職員の資質向上
職員への研修、資格取得等の促進を通じた資質向上に努める。
第3 国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する事項
1 試験及び研究並びに調査
(1)重点研究領域
平成11年7月に制定された「食料・農業・農村基本法」及びその理念や施策の基本方向を具体化した「食料・農業・農村基本計画」並びに平成11年11月に策定された「農林水産研究基本目標」に示された研究開発を行うため、研究所においては、「ゲノム生物学等を利用した生命科学研究」、「農林水産業の飛躍的発展を目指した革新技術の開発」、「新産業の創出を目指した研究」及び「バイオテクノロジーを支える基盤技術の開発」を重点研究領域として設定する。また、緊急に解決すべき問題については、研究開発を積極的に推進する。なお、研究開発に当たっては、安全性の確保に十分配慮する。
(2)研究の推進方向
技術の開発
取り組む:新たな研究課題に着手して、試験及び研究を推進すること。
解明する:原理、現象を科学的に明らかにすること。
開発する:利用可能な技術を作り上げること。
確立する:技術を組み合わせて技術体系を作り上げること。
育 種
取り組む:新たな育種課題に着手して、育種研究を推進すること。
開発する:育種に必要な系統又は素材を作出すること。
育成する:品種又は中間母本を作出すること。
ア ゲノム生物学等を利用した生命科学研究
(ア)ゲノムの構造解析とゲノム情報解析システムの確立
a イネゲノムの全塩基配列の解読・公開を加速化するとともに、イネの完全長cDNAライブラリー等を早急に整備し、機能解明を進める。
b 家畜及びカイコのcDNAライブラリーを整備するとともに、高密度遺伝地図、物理地図を開発する。
c 塩基配列中の遺伝子の領域と機能を推定する第1世代コンピュータプログラムを開発するとともに、地図情報、生理機能等を含む包括的ゲノム情報解析システムの開発に取り組む。
(イ)ゲノム情報等を活用した遺伝子の単離と機能解明
a 塩基配列、遺伝地図等のゲノム情報と分子遺伝学的手法を活用し、イネについては、有用遺伝子100個以上の単離・機能解明を行う。ブタ等の家畜については、椎骨数、肉質等に関する遺伝子の単離・機能解明を行う。カイコでは、DNV抵抗性等に関する遺伝子の単離・機能解明を行う。
b 遺伝子発現機構の解明に資するため、遺伝子の網羅的な発現解析システムを開発する。
c 植物の遺伝子発現の初期過程に関与する遺伝子の単離等に着目して高次調節機構を解明する。
(ウ)タンパク質の網羅的解析と構造生物学的解明
a 高精度解析技術を導入し、イネ等のタンパク質の大量解析を行い、アミノ酸配列等の情報からなる約3,000種のタンパク質データベースを開発するとともに、15種類以上のタンパク質の立体構造を決定し、これらの構造と機能の関係を解明する。
b 計算科学的手法によるタンパク質構造・機能予測のための基盤技術を開発する。
c 糖鎖受容体及び糖鎖に対する細胞応答に着目して糖鎖の機能を解明する。
(エ)植物における生命現象の分子機構の解明
a 新たな制御因子の同定・作用機作に着目して光合成及び物質代謝・転流機構を解明する。
b 植物の器官形成に関与する新たな遺伝子の単離・機能解析に着目して植物の発生分化機構を解明する。
c 植物ホルモン等受容体や情報伝達に関与する遺伝子に着目して生理活性物質の作用機構を解明する。
(オ)動物における生命現象の分子機構の解明
a 細胞生物学的特性等に着目して家畜の発生分化、形態形成、組織再生機構を解明する。
b 家畜の成長、中枢神経機能に着目して発育及び細胞機能関連遺伝子の発現調節機構、本能行動を制御する脳・神経調節機構を解明する。
c 発現している遺伝子群の探索・同定に着目して昆虫等の発生分化、脱皮変態、再生、分子進化機構を解明する。
d 生理・生化学的手法による情報伝達物質の同定等に着目して昆虫等の脳・神経系の制御機構を解明する。
e アミノ酸、ペプチド等の化学物質に着目して昆虫等の体色制御機構、特異的代謝機能を解明する。
(カ)環境応答、生物間相互作用の分子機構の解明
a 耐塩性等に関わる遺伝子の単離とその作用機作に着目して環境との相互作用を解明する。
b 植物における病原体の認識機構に関する遺伝子の単離等に着目して植物と病原菌の相互作用を解明する。
c 植物と根粒菌との共生機構に関する遺伝子の単離等に着目して植物と共生微生物の間の相互作用を解明する。
d 行動制御物質の単離等に着目して昆虫間、昆虫と植物、昆虫と微生物の相互作用を解明する。
e 異物認識と免疫寛容機構等に関する遺伝子に着目して生体防御機構を解明する。
イ 農林水産業の飛躍的発展を目指した革新技術の開発
(ア)遺伝子組換えによる機能性作物等の開発
トウモロコシ由来のC4光合成酵素遺伝子を複数導入したスーパー光合成イネの開発を進めるとともに、イネゲノム研究等で単離された遺伝子を活用しつつ、病害虫に対する複合抵抗性、環境ストレス耐性、機能性等を高めた組換え個体を開発する。
(イ)新たなDNAマーカーの開発
a イネについて、簡便なDNAマーカーを開発し、それを利用したDNAマーカー選抜育種システムを確立する。
b 家畜について、肉質等に関わるDNAマーカーを開発する。カイコについて、耐病性、絹の高品質化等に関わるDNAマーカーを開発する。
(ウ)放射線利用技術の開発
a イオンビーム等の新たな変異原を導入するとともに、ガンマー線照射による効率的変異作出技術を開発する。
b 放射線によるイネ貯蔵タンパク質等の新規形質突然変異体の分子生物学的解析を行うとともに、木本性作物の耐病性突然変異の効率的な誘発・選抜方法の開発と新規素材の作出を行う。
ウ 新産業の創出を目指した研究
(ア)有用物質生産技術の開発
a 植物について、血圧降下作用を有する物質等を産生する遺伝子組換え個体を開発する。
b カイコについて、サイトカイン等有用物質を産生する遺伝子導入個体を開発するとともに、遺伝子導入カイコの周年・安定生産システムを確立する。
(イ)生体機能模倣技術の開発
a 昆虫の味覚受容分子等を利用したバイオセンサーの基本モデル設計に取り組む。
b 昆虫の飛翔行動等を解明するための測定・解析ツール、手法を開発する。
(ウ)生物機能の改変による新規用途生物の開発
a DNAマーカー等を利用した系統解析法を開発するとともに、非休眠性等を付与した天敵昆虫の素材の開発に取り組む。
b カドミウム、NOx、SOx等の環境汚染物質、有害化学物質の吸収・分解能を高めた環境修復植物個体を開発する。
(エ)新素材及び新蚕糸技術の開発
a 繭の新素材としての利用技術の開発に資するため、セリシン繭等を生産する特徴あるカイコ品種を開発する。
b 絹の生体親和性等の機能性を新素材として利用するため、物質変換・加工に関する基本技術を開発する。
c 絹タンパク質、キチン等を用いた創傷被覆素材等の素材を開発する。
d 繭糸素材等を用いて伸縮性絹糸や平面絹等の新生活素材を開発する。
エ バイオテクノロジーを支える基盤技術の開発
(ア)生物の多様性の解明と保全・利用技術の開発
a 分子情報等に基づいて生物の多様性を解明するとともに、多様性保存技術の開発に取り組む。
b 多型解析等を活用することにより、生物遺伝資源における機能多様性等を遺伝子レベルで同定・評価し、遺伝子資源として利用する。
c 難保存性動植物・微生物の超低温等による保存研究に取り組むとともに、野生種等の現地保存が必要な遺伝資源の調査研究を行う。
(イ)実験用動植物の開発
a トランスポゾンを利用した約4万系統のノックアウトイネを開発する。
b 生体防御機構の解明及び異種間臓器移植等の新規医療技術開発に資するため、免疫系を中心とした遺伝子の導入、欠損等による10数種の疾患モデルマウスを開発する。
c 遺伝子導入による効率的な疾患モデルブタの作出技術を開発する。
(ウ)組換え動植物作出のための基盤技術の開発
a 組織・器官特異的又は各種誘導性プロモーター等、多様な特異性を示すプロモーターを開発する。
b 植物の相同組換え技術の開発に取り組むとともに、形質転換効率の不十分な作物について効率を向上させる技術を開発する。
c トランスポゾンの改良等に着目して昆虫形質転換系等を開発する。
d 動物・植物の代謝系を利用した新たな選抜技術の開発に取り組む。
e 組換え体の安全性評価手法の開発に取り組む。
オ 生物遺伝資源の収集、評価、保存・増殖、配布、情報管理
ジーンバンク事業の植物、動物、微生物、DNA部門のセンターバンクとして、サブバンク等と協力して、数値目標を設定して遺伝資源の収集、評価、保存、情報管理等を行うとともに、利用者への配布を行う。特に、生物多様性条約下における遺伝資源収集点数の拡大及び特性評価の充実を図るとともに、公開用データベースを高精度化する。また、共同調査により海外における遺伝資源の多様性保全に取り組む。
2 専門研究分野を活かした社会貢献
(1)分析、鑑定
(2)講習、研修等の開催
(3)行政、国際機関、学会等への協力
3 成果の公表、普及の促進
(1)成果の利活用の促進
(2)成果の公表と広報
(3)知的所有権等の取得と利活用の促進
重要な研究成果については、わが国の農林水産業等の振興に配慮しつつ、特許等の取得により権利の確保に努めるとともに、民間等における利用の促進を図る。また、育種研究成果については、国の命名登録制度を活用しつつ、優良品種の育成・普及に努める。
第4 財務内容の改善に関する事項
1 収支の均衡
適切な業務運営を行うことにより、収支の均衡を図る。
2 業務の効率化を反映した予算計画の策定と遵守
経費節減目標を踏まえた運営費交付金の交付を受けることを前提に中期計画の予算を作成し、当該予算による運営を行う。
第5 その他業務運営に関する重要事項
人事に関する計画
(1)人員計画
(2)人材の確保