生物研ニュースNo.49

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受賞・表彰

平成25年度の本農学賞・第50回読売農学賞

矢野 写真

受賞講演の様子

受賞タイトル:

イネの量的形質に関する分子遺伝学的研究

受賞者:センター長 矢野 昌裕 (農業生物先端ゲノム研究センター)

受賞日:4月5日

 植物の草丈や花の咲く時期、収量など、作物の品種改良にとって重要な性質のほとんどは、複数の遺伝子による複雑なネットワークによって決定されます。これらの性質は遺伝様式が複雑で、ある/なしでは評価できない連続的な変異を示すことから、「複雑形質」あるいは「量的形質」と呼ばれます。私たちの研究グループでは、イネを対象として様々な量的形質に関する研究を展開しました。中でも開花期については、現在までに関係する7つの量的形質遺伝子座(QTL)を特定し、イネの開花調節機構の理解に大きく貢献することができました。さらにイネとは仕組みが異なる「シロイヌナズナ」という植物の開花調節機構との比較から、種を超えて植物が開花を調節する仕組みを、より深く理解することにも貢献できました。

 私が農林水産省において研究を始めた1986年は、QTLという言葉そのものがまだ一般的ではなく、DNAマーカーの利用により海外でQTLの研究が開始されようとしていた時でした。幸運にも、入省以来一貫してイネを材料にしたQTLの研究に従事することができました。またその成果は、私自身のそもそもの興味であった品種改良の効率化にも貢献できています。これまでの研究を振り返ると、研究の場の変化や、新しい技術や人との出会いが大事だったと思います。例えば、新人研修でのDNA研究の基本的な技術の習得、北陸農業試験場における実験材料の作出、生物研でのイネゲノム研究プログラムへの参加など、その時々でタイミングと運に恵まれました。また多くの共同研究者や諸先輩方の協力と応援がなければ今回の受賞は実現しなかったと思います。今回の受賞に際して、改めて、これからの方々に心から感謝いたします。

[矢野 昌裕]

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