受賞式の様子
受賞タイトル:
カメムシ類の幼若ホルモンの構造決定とその機能の研究
受賞者:上級研究員 小滝 豊美 (昆虫科学研究領域 昆虫成長制御研究ユニット)
受賞日:3月27日
チャバネアオカメムシ
(害虫)
ヒトやほ乳類と同じく、昆虫もホルモンを持っています。昆虫の主要なホルモンの一つに「幼若ホルモン」があり、幼虫から蛹(さなぎ)・成虫への変態の抑制や、成虫の生殖の刺激など、様々な作用を持っています。幼若ホルモンは昆虫の種類により化学構造が少しずつ違っています。私は農業害虫を多く含むカメムシ類を対象として、幼若ホルモンの研究に取り組んできました。
もともと幼若ホルモンの研究は、1930年代に行われた「サシガメ(カメムシの仲間)」の実験から始まりました。しかしその後長らくの間、カメムシ類の幼若ホルモンの化学構造は解明されていませんでした。私は共同研究者の助けを借りてその謎を解き、カメムシが「JHSB3」という新規な構造の幼若ホルモンを持つことを発見しました。JHSB3はカメムシ類に特有なので、JHSB3の生合成や働きを抑えることができれば、カメムシ類だけに効く新たな農薬の開発につながると期待されます。今回の学会賞受賞は、これら一連の成果が認められたものです。
私がカメムシの研究を始めてほぼ30年が経ちます。JHSB3にたどり着くまでの日々を振り返ると、僥倖に恵まれたとしか言いようがありません。しかしそれも、共同研究者をはじめ、助けてくれる仲間たちが居て、はじめて掴めた幸運だと思っています。これまでに関係した全ての皆さんにお礼を申し上げ、今後も新たな謎に取り組んでいきたいと思います。
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