蚕糸昆虫研ニュース No.39(1998.6)

<情報コーナー> −科学技術庁創意工夫功労者−
 
ハンドトラクター装着用溝掘り機の考案
 

 桑苗の生産においては,接木した原苗木を苗圃に植付けのための溝掘り作業は大変な重労働である。これまでにもハンドトラクターに装着する簡易な溝掘り機が開発されているが,それらは溝の片側にのみ掘った土を盛り上げる構造であるため往復作業が出来ず,1回掘るごとにトラクターを元の側まで戻さなくてはならなかった。また,掘幅が広いため植付けた原苗木が倒れやすいというように作業時間,植付け作業の良否等に問題があった。
 今回考案した溝掘り機は,既存のハンドトラクターの回転軸を活用して溝掘り刃を取り付け,掘りながら土を左右に盛り上げ,溝の深さを5〜20cmの範囲で自由に調節でき,かつ往復作業ができることを特徴とするものである。そのため,原苗木の植付け作業は容易になり,溝掘り作業の能率は従来機に比べほぼ2倍に向上した。
 考案の内容は溝掘りを迅速に行い,かつ原苗木の植付け作業の軽労働化を図るため,畦間150cm〜160cm程度,幅10cm前後,深さ5〜20cmの溝を効率よく掘削する装置を考案した。本装置は,溝掘り刃および刃先を特徴とするもので,ハンドトラクターに装着するためのドラムローター刃受けチューブ,溝掘り刃固定フレーム,溝掘り刃取付けアームからなっている。
 この考案により,@溝幅が狭く,側面が鋭角で,掘り挙げた土が散乱しないため,原苗木をほぼ直立に伏込むことが可能となり,覆土も容易であること,A狭い畦間でも溝掘り作業が能率よく実施でき,溝掘り作業が往復可能となり,連続して溝を掘ることができること,B溝の断面がV字型になるため,接木原苗木の植付け作業が容易であり,苗木生産では品質の良い苗ができること,C本装置の制作費は安価であるばかりでなく,ハンドトラクターへの脱着も容易である等の効果がある。さらに,ヤマイモなどの作物の植付けにも応用が可能である。

 
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