蚕糸昆虫研ニュース No.40(1998.9)

<情報コーナー>
 
「虫が豊かにする生活」をテーマに農林水産省で特別展示を行う
 

 6月1日〜5日の間,関係機関の協力を得て「消費者の部屋」で特別展示を行いました。昆虫の持つ特殊な機能とその利用について,5つのゾーンに実物,サンプル,パネルなどを配して紹介したものですが,「虫が豊かにする生活」のテーマは,「おや?っと思わせるタイトルである」と多くの方々からお褒めの言葉をいただきました。期間中の来場者は1,771名で,そのうち1,547名(87.4%)の方からアンケートの回答が寄せられました。以下,主な展示内容と感想を簡単にご紹介します。

健康のゾーンでは,昆虫機能を利用した医薬品や医療素材をつくる道を開く視点から,抗菌性タンパク質(昆虫の生体防御),血栓予防薬・人工血管向け材料(抗血液凝固物質),人工腱・靱帯用素材,人工皮膚(創傷被覆材)等を紹介しました。感想として,医療関係利用の研究開発に期待(60代,男性),絹素材と健康分野の開発に興味(60代,男性)等の声がありました。

環境のゾーンでは,化学農薬に頼らない天敵昆虫・ダニ類による害虫防除や昆虫フェロモンによる害虫制御,また,有機廃棄物を再資源化するハエのリサイクル(出展:フィールド)を紹介しました。感想として,化学薬剤を使わない害虫防除の今後に期待(40代,男性)、生物農薬が自然系のバランスを崩さないか心配(50代,男性)等の声がありました。

衣のゾーンでは,絹製品のほかにアマゾンに生息するモルフォチョウの発色構造利用のスーツ・ネクタイ(出展:日産自動車),微生物が生産する青紫色素利用の着物(出展:葉屋サイエンスファーム)等を紹介しました。感想として,布の色が素敵,商品化を(20代,女性)、絹製品の低価格販売のための量産技術を(20代,女性)等の声がありました。

食のゾーンでは,シルク食品(出展:全養連,岡谷機能性シルク研究会ほか),ミツバチ食品(出展:畜試)を紹介しました。感想として,シルクの食としての利用に驚いた(20代,男性),花粉だんごは初めて知った(40代,男性)等の声がありました。

住のゾーンでは,シルクの新たな用途としてのインテリア照明用の傘(シルクシェル),寝具類(シルクウェーブ,出展:マペペユニット)等を紹介しました。絹の装飾性を生かした開発に興味(60代,男性)等の感想がありました。

 全般的な印象として,一つ一つ時間をかけて展示物を見られる熱心な方や生きたカイコに懐かしがる方など多数おられ有意義な展示でした。