蚕糸昆虫研ニュース No.40(1998.9)

<情報コーナー:帰国報告>
ウズベキスタンの養蚕事情
 

 平成10年5月19日から7月29日まで国際協力事業団(JICA)養蚕技術短期専門家としてウズベキスタンを訪問する機会を得,同国養蚕業の現状を垣間見ることができた。
 ウズベキスタンは農業就業人口46%で農業生産がGNPの1/3を占め,世界第3位の繭生産国でもある。しかし,1990年に33,000トンあった繭生産量は独立後の経済の混乱等により年々減少し,1997年には21,000トンにまで落ち込んだ。このため,ウズベキスタン政府は養蚕業の発展・振興を図るべく,養蚕技術の改善及び近代化を進めようとしている。このような背景から,ウズベキスタン政府は同国養蚕技術のレベルアップを図るため,我が国に技術協力を要請してきた。
 繭の生産については,大統領も大きな関心を持っており,大統領令を発令し,本年4月蚕糸に関する行政組織を大幅に改組した。これにより,これまで農業水利省が管轄していた養蚕部門(桑栽培から繭生産まで)と軽工業省が管轄していた絹加工部門(製糸から絹織物まで)は一本化されることになり,新たに設立された国営公社「ウズベク・イパギ」(格は省に相当)が養蚕から絹加工までの行政を一括して担当することとなった。上記大統領令では,@2005年までに繭生産量を35,000トンにする,A国際市場で競争できるよう繭の品質向上を図る,という大きな目標が掲げられており,この目標達成のために大幅な組織再編が行われたものである。
 繭生産の拡大と品質向上のための技術革新を図りたいというのがウズベキスタン政府の願望であり,日本の養蚕技術に対する期待も大きい。これに応えるためにはまず,現地の技術者を積極的に日本に受け入れ,養蚕技術の習得と同時に日本語の研修を行い,カウンターパートの養成を図ることが極めて重要であると考える。

 

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