蚕糸昆虫研ニュース No.41(1998.12)

<情報コーナー:招へい等外国人研究者紹介>
 
                 国際研究交流を通じて思うこと
 

 私はイタリアのミラノ大学で生物化学の学問を修めた後,国立研究機関のミラノ絹糸研究所に就職し,動物蛋白質繊維の研究に従事しています。羊毛繊維に混在するモヘアなど高級素材の含有量を電子顕微鏡観察によりクチクルの厚さの違いから定量する手法を世界に先駆けて開発しました。絹蛋白質に新たな機能特性を付与するためグラフと加工や化学修飾加工の仕事にも取り組んでいます。

 私と蚕糸昆虫研との最初の出会いは1989年のことでした。2年後,省際基礎研究を統括する仲間の研究室で3カ月間共同研究を行い,これをきっかけに両国の共同研究が順調に進むことになりました。人的な交流が何度か繰り返され,共同研究の成果は国際誌に数多く掲載され,国際交流が益々緊密なものになっています。本年,5度目の来日が実現でき,関係者と今後推進すべき課題を論議しました。また,COEシンポジウムに参加し,COE研究が順調に進んでいること,異なる専門分野の研究者が研究目的達成に向けて努力している様子を肌で感じ取ることができました。COEの「改変・評価」では,昆虫生体高分子を新しいバイオ材料として利用するための研究開発が進展していることが特に印象に残りました。木村所長,井上総括リーダーが国際研究交流を学術的な水準にまで引き上げられたことに敬意を表します。研究が更に発展し,各種産業分野で利用できる絹製バイオマテリアルの成果が上がるよう期待します。
  さようならまたあいましょうという意味のイタリア語,「アリベデルチ」という言葉をつくばでお会いした研究仲間全員にお贈りします。
 

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