蚕糸昆虫研ニュース No.42(1999.3)


<情報コーナー> 
『第13回欧州味と匂い学会』に参加して

 1998年9月8日〜12日にイタリアのシエナで開催された『第13回欧州味と匂い学会』に参加、研究発表を行ってきた。尤もこの学会は動物一般全てが対象になっているため、昆虫関係者にとっては13日に行われた『昆虫研究者のための関連集会』の方がより得るものが大きかったと思われる。『欧州の…』となっているが、最近はアメリカからも大勢研究者が押しかけるようになり、勿論日本からもそこそこの参加があったが、今回、その中で昆虫関係の日本人参加者は筆者のみだった。
 発表に関しては、特に昆虫分野ではここ数年、脳内情報処理に関する研究が急速に進んでおり、特に筆者研究室の井濃内室長らも推進している光学計測による脳での情報処理機構の研究は一大ブームになった感がある。このため従来は墨による線書き図が精々だったこの分野の発表は、『お絵描きパソコン』の普及もあって非常にカラフルになった。最近の国際学会の例に漏れず、本学会も参加者と発表演題の増加に伴い手段の主体がポスターに移行しつつあるが、このこともあって本分野のフロアは美術展に近い様相となり、知見の普及にも大きな効果を上げていると思われる。
 対して感覚器の研究にはあまり大きな変化はないが、受容/輸送蛋白質の構造解析、或いは特定の神経細胞のGC動画を使った立体構造の研究等の新手の題目に加え、昔ながらの電気生理的手法によりながら、従来は使われなかった材料による研究が登場するなど、確実に広がりを見せている。筆者らの”アゲハは口で味をみる”研究発表は後者の典型例だが、漫画的手法を使った判り易いポスター作りを心掛けたこともあって非常に好評で、質問に訪れた先輩方から今後の補強実験についての重要な示唆を頂いたり、『是非早く投稿を』という厳しい?指摘を受けたりし、この分野で確実に足場を築けていると実感した。
 

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