蚕糸昆虫研ニュース No.42(1999.3)

<情報コーナー>
 

カリフォルニア大学デイヴィス校昆虫学科への派遣(二国間協力に伴う専門家派遣)

 98年9月末から4週間、カリフォルニア大学デイヴィス校にて「昆虫におけるホルモンの生理活性発現及び分解制御機構」の研究を行った。私が蚕昆研へ来る前に所属していた研究室で、そこのボス、Bruce Hammock は、昆虫学科と環境毒物学科の両方に教授のポジションを持ち、3つの研究グループを指揮している。その3つとは、昆虫ホルモン関連と組換えバキュロウイルスの研究、哺乳動物の解毒酵素(エポキシドヒドラーゼ、カルボキシルエステラーゼ)の研究と、環境中の農薬やダイオキシンの免疫学的微量定量法開発である。各々の研究テーマに有機化学と生化学と分子生物学といった分野の異なる研究者を組ませる方法で成果を上げている。さて今回は、昆虫幼若ホルモン(JH)アナログの誘導体を持参し、親和性を持つタンパクとの相互作用をリガンドブロッティングにより検討した。これはタンパク質に特異的に結合する分子(リガンド)で検出する方法で、抗体によるウェスタンブロッティングの変法である。JHアナログには、JHに構造のよく類似したメソプレンと、フェノキシカルブのように構造的には異なるフェノキシフェノキシプロピル(PPP)基を持つものがある。それぞれ特徴的構造のビオチン誘導体を調製し、タンパクに特異的に結合したビオチンを、酵素で標識したアビジンで検出した。粗タンパク標品には、抗メソプレンモノクローナル抗体の発現培養液を用い、電気泳動で泳動し膜へ転写後、メソプレンビオチンと反応させた。8つの独立したクローンを分析すると、全クローンでそれぞれ1つのバンドが陽性を示した。さらに、構造が類似しないPPPビオチンの場合でも、3つのクローンが陽性、すなわち交差反応性を示した。これらはJH自身にも親和性を示すことが予想される。その3クローンを用いてメソプレンビオチンとの競合反応の利用で、これまで困難だった生体JH濃度の微量定量への応用が期待される。
 

戻る