蚕糸昆虫研ニュース No.45(1999.12) 
 
所長就任にあたって
 
 蚕糸・昆虫農業技術研究所
    井 上  元
 
 平成11年10月1日付けで、蚕糸・昆虫農業技術研究所の所長を拝命いたしました。当研究所は昭和63年に、蚕糸研究の豊富な蓄積の上に立って昆虫機能研究を総合的に推進する目的で設立されましたが、その後の研究展開をみますと、この新しい分野において世界をリードしている面が多々あります。平成8年度からは科学技術振興調整費の支援をうけてCOE育成事業「昆虫機能利用研究」を推進していますが、この推進を通じて研究所全体が大変活発化してきていると外部の方々から評価されており嬉しく思っています。このような状況は、当時における当研究所の設立が時機を得たものであり、農林水産省が世界に対して、昆虫機能研究を総合的に推進することの意義を先見性と英知をもって示した証左と言えます。
  糸ならびに昆虫機能の研究は基礎から応用まで幅広く社会に貢献できる活躍の機会を持っています。さまざまな環境への適応機能や病原菌の侵襲と闘う生体機能、化学物質の刺激受容と情報解析、特徴ある運動機能など、昆虫が有する優れた機能ならびに未知の機能の解明は、新しい技術の創出など多大な可能性を秘めているところから、研究に対する期待感が醸成されてきております。農業分野にとどまらず広く社会生活全般との関わりで示されている期待に応えていくことが大切でありますが、最近では多くの優れた研究成果が論文として発表され、また開発された技術が特許として出願されており、頼もしく思っています。これらの成果をもとに、国際的な研究連携や民間企業との共同研究がより活発化していくことを期待しています。それと同時に、私たちが何を研究しどのような成果をあげているのか、一般社会にわかり易く説明していく広報と情報提供に努めることも大切です。
 申すまでもなく、今、我が国は大きな変革の時を迎えています。当研究所も来る21世紀からは独立行政法人の新しい研究組織として再出発することが予定されています。新しい生物産業の創出を目指す生命科学研究の一翼を担い一層発展させていくことを、所員各位と共に決意したいと思います。   

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