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理事長挨拶

理事長:廣近洋彦 近年地球規模で顕在化している気候変動や人口増などにより、中長期的に世界の食料需給が逼迫することが予想されています。この問題を解決するためには、農業生物の潜在能力を最大限に引き出すとともに、飛躍的な機能向上を可能にする技術の開発が求められています。このような技術は、我が国の農業の競争力の向上のためにも重要です。また、我が国の農業が競争力を失いつつある中で、農業生物のもつ潜在力を活用することにより、新産業創出を図ることも重要です。

 このような状況をふまえて、農業生物資源研究所(生物研)では、植物、昆虫、動物などの農業生物を対象としてバイオテクノロジーを中心とする基礎的・先導的な研究を進めることにより、革新的な農業技術の開発や新産業創出に取り組んでいます。第1期中期目標期間(2001~2005年度)においては、イネゲノムの全塩基配列の解読、カイコの遺伝子組換え技術の開発、遺伝子組換えブタの作出などの大きな成果を上げてきました。これらの成果を基盤として、第2期中期目標期間(2006~2010年度)においては、農業上重要な遺伝子の同定・機能解明を進めるとともに、ゲノム情報を活用した効率的な育種技術を開発し、従来技術では困難であった、美味しく、いもち病に強いイネ品種を開発するなどの成果を上げています。さらに、カイコやブタでもゲノムの全塩基配列の解読を終了するなどの成果を上げています。第3期中期目標期間は2年前から開始されていますが、生物研が強みとする研究を重点的に推進する体制を整備し、研究の強化、加速を目指して取り組んでいるところです。具体的には、遺伝資源やゲノム研究でのこれまでの研究蓄積を基盤として、次世代ゲノム育種法の開発、コムギや害虫のゲノム解読と利用技術の開発などにより革新的な農業技術の開発を目指しています。また、これまでに開発したゲノム育種技術などについては、育種機関との連携を強化して普及を進めています。新産業創出につなげる研究においては、遺伝子組換え技術の実用化などの大きな課題に挑戦しています。具体的には、花粉症治療米の開発、遺伝子組換えカイコを用いたヒト・動物医薬用機能タンパク質の高率生産技術の開発、抗体医薬品や再生医療技術の開発への利用が期待される免疫不全ブタの開発などを、大学、民間企業等と連携して進めています。

 生物研は、農業分野のバイオテクノロジー研究の中核機関として位置づけられていますが、波及効果の大きな革新的農業技術の開発や新産業創出につなげる研究を推進することにより、中核機関としての役割を果たしていくとともに、産学官連携を通して、成果の社会還元を目指します。皆様のご理解とご支援ご協力をお願いいたします。

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