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トマトモザイク病の病原ウイルスの複製を阻害する遺伝子を発見(独)農業生物資源研究所は、トマトの遺伝子「Tm-1」が、トマトモザイク病の病原体であるトマトモザイクウイルス(ToMV)の増殖を阻害する仕組みを明らかにしました。 ToMVは、トマトに感染するとモザイク病を引き起こし、収量を著しく低下させます。本来トマトの近縁野生種に存在するTm-1遺伝子は、このウイルスに対する抵抗性を付与する遺伝子として知られ、従来から多くのトマト品種に導入されてモザイク病の被害軽減に貢献してきました。 今回当研究所の研究グループは、Tm-1遺伝子をもつトマトからToMVの複製を阻害する因子(タンパク質)を同定しました。このタンパク質に対応する遺伝子を単離し、ToMV罹病性トマト品種に導入したところ、ウイルスが増殖できなくなりました。また、遺伝解析によりこの遺伝子はTm-1遺伝子と同一であることがわかりました。さらに、このタンパク質が、ウイルスの複製に必要なタンパク質に結合して、その働きを阻害することも明らかにしました。 これまでに知られている植物ウイルス抵抗性遺伝子の多くは、ウイルスの感染を感知して自己防御反応を誘起するスイッチの役割を果たすものであり、今回のTm-1遺伝子産物のようにウイルスの複製を直接阻害するという発見は画期的です。ウイルスは限られた宿主生物種にしか感染することができませんが、今回の成果は、ウイルスが感染できない植物にウイルス増殖阻害因子が存在する可能性を示すもので、これまでに有効な抵抗性遺伝子が見つかっていないウイルスに対する抵抗性遺伝子の発見につながると期待されます。 この研究は、文部科学省 科学研究費補助金 特定領域研究『植物−病原微生物の分子応答機構の解明(平成15年度〜平成16年度)』および交付金プロジェクト『共生系の解明による生物制御基盤技術(平成17年度〜現在)』により実施されました。成果の概要は米国科学アカデミー紀要(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)に掲載予定で、これに先立ち今週中(日本時間)にオンラインで公表されます。 なお、この研究の一部はすでに国内特許出願(特願2006-094152)されています。 Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 10.1073/pnas.0703203104
【掲載新聞】8月9日(木):日本農業新聞、8月31日(金):科学新聞(参考記事:8月8日(水):日本経済新聞、日本産業新聞) [ 農業生物資源研究所トップページ ] [ プレスリリースリスト ] |