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プレスリリース
平成20年3月25日
東京工業大学
独立行政法人 農業生物資源研究所
生物系特定産業技術研究支援センター

干からびた生物(昆虫)が元どおりに生き返るメカニズムを
物質科学の手法で解明

- 水の代替物質トレハロースが鍵を握る生物の極限乾燥耐性の仕組み -


国立大学法人東京工業大学は独立行政法人農業生物資源研究所と共同で、アフリカ中部半乾燥地帯原産のネムリユスリカという昆虫が、体内に蓄積した大量の水代替物質トレハロースを利用して極限環境耐性能力を獲得するメカニズムを世界で初めて明らかにしました。

この幼虫は乾燥状態に置かれると、失われてゆく水に代わってトレハロースという糖を体内に大量に蓄積します。今回の共同研究ではこのトレハロースが幼虫の体内のどこに蓄積されて、それがどのような物理的状態になっているかを明らかにしました。(別紙参照)(PDFファイル)

トレハロースは、自然界では、きのこ類や酵母の他、乾燥に強い幾つかの動植物に含まれており無毒の物質です。農業生物資源研究所では既に、トレハロースを特異的に細胞の内外に輸送するタンパク質の遺伝子をネムリユスリカから単離することに成功しております(平成19年7月6日プレスリリース)。この成果と今回の研究成果を組み合わせれば、細胞等生体組織を生きたまま常温乾燥保存する技術の開発や、乾燥に強い作物の作出等を効率的に推進することができると期待されます。

今回の研究は、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 生物系特定産業技術研究支援センター「新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業」「ネムリユスリカの極限環境に対する耐性の分子機構の解明(研究代表:奥田隆、平成16年度〜20年度)」で実施されたもので、成果の概要は、2008年3月25日に米国科学アカデミー紀要(PNAS;http://www.pnas.org/)に、オンラインで公表の予定です。


Minoru Sakurai, Takao Furuki, Ken-ichi Akao, Daisuke Tanaka, Yuichi Nakahara, Takahiro Kikawada, Masahiko Watanabe, and Takashi Okuda
Vitrification is essential for anhydrobiosis in an African chironomid, Polypedilum vanderplanki PNAS published March 24, 2008, 10.1073/pnas.0706197105 (Biophysics) OPEN ACCESS ARTICLE


【内容に関するお問い合わせ先】
  東京工業大学 バイオ研究基盤支援総合センター 教授 櫻井 実
    電話:045-924-5795、電子メール:msakurai@bio.titech.ac.jp
  農業生物資源研究所 昆虫科学研究領域 乾燥耐性研究ユニット長 奥田 隆
    電話:029-838-6157、電子メール:oku@affrc.go.jp

【事業に関するお問い合わせ先】
  生物系特定産業技術研究支援センター 新技術開発部 基礎研究課 石川清康、田中芳一
    電話:03-3459-6569、電子メール:yoshika@affrc.go.jp

【広報に関する問い合わせ先】
  東京工業大学広報センター
    電話:03-5734-2975、2976、ファクス:03-5734-3661、
    電子メール:kouhou@jim.titech.ac.jp
  農業生物資源研究所 広報室長 新野孝男 電話:029-838-8469


【掲載新聞】
3月25日(火):日本経済新聞(夕刊)、3月26日(水):日経産業新聞、化学工業日報、3月28日(金):朝日新聞、4月6日(日):毎日新聞、Science News / Live Another Day: African Insect Survives Drought In Glassy State March 29th, 2008; Vol.173 #13

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