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プレスリリース
平成21年8月4日
独立行政法人 農業生物資源研究所

加工特性に優れた米粉の開発を加速

- お米のタンパク質を強固につなぐしくみを解明 -


ポイント
  • 食品の品質の決定に関与することが知られている、タンパク質を強固につなぐ化学結合(架橋)が、コメの中でどのように作られるかを解明
  • 製パン特性に優れたコメではタンパク質の架橋が多いことを発見
  • 加工特性に優れた米粉の開発に貢献することが期待

概要                                                                                             

農業生物資源研究所は、お米のタンパク質に架橋(タンパク質を強固につなぐ化学結合)が作られるしくみを解明しました。

タンパク質の架橋は、豆腐やパンなどの身近な食品の品質を決定する重要な因子の一つです。お米にはデンプンに加えて、タンパク質が豊富に含まれており、酸化反応によってタンパク質に架橋ができることは分かっていましたが、そのしくみは分かっていませんでした。今回、活発にタンパク質を生産している登熟中のお米を詳細に観察することによって、タンパク質の架橋ができるときに、酸素が消費されること、また、この反応の副産物として活性酸素の一種である過酸化水素が発生していることが明らかになりました。過酸化水素は一般的に細胞に有害ですが、イネでは種子の形成に必要である可能性が示されました。また、この過程に2種類の酵素(Ero1とPDI)が関与していることも明らかになりました。

この成果により、「生物はどのようにしてタンパク質の架橋をつくるか?」という生化学分野における重要な問題を解く手がかりが得られました。また、当所で開発を進めているパン用の米粉(esp2米粉、特許申請済み)にタンパク質の架橋がきわめて多いことが明らかになりました。今後、加工特性に優れた米粉の開発が加速されることが期待されます。

この成果の概要は、2009年8月3日の週に米国科学アカデミー紀要のオンライン版で公開されます。

予算:生研センター「基礎研究推進事業」(平成17年度〜現在)
特許:特願2007-051398、特願2008-058057、特願2008-058106
参考資料 [PDFファイル:150キロバイト]
参考説明図 [PDFファイル:212キロバイト]

Yayoi Onda, Toshihiro Kumamaru and Yasushi Kawagoe
ER membrane-localized oxidoreductase Ero1 is required for disulfide bond formation in the rice endosperm
Published online before print August 6, 2009, doi: 10.1073/pnas.0904429106

問い合わせ先など                                                                            

研究代表者:(独)農業生物資源研究所 理事長石毛光雄
研究推進責任者:(独)農業生物資源研究所 遺伝子組換え技術研究ユニット
主任研究員 川越 靖
電話:029−838−8391、電子メール:kawagoe@nias.affrc.go.jp
研究担当者:(独)農業生物資源研究所 遺伝子組換え技術研究ユニット
特別研究員 恩田弥生
広報担当者:(独)農業生物資源研究所 広報室長新野孝男
電話番号:029−838−8469


【掲載新聞】 8月4日火曜日:日経産業新聞、8月5日水曜日:化学工業日報、8月28日金曜日:朝日新聞

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