プレスリリース

イネの品種改良に新たな歴史を拓く、いもち病抵抗性遺伝子の発見

- 美味しく、いもち病に強い品種を開発 -

概要

農業生物資源研究所は、愛知県農業総合試験場、石川県立大学、STAFF研究所と共同で、陸稲（オカボ）から、新しいタイプのいもち病抵抗性遺伝子を発見し、さらにその遺伝子のゲノム情報を利用して、美味しく、いもち病に強い品種の開発に成功しました。

陸稲は、イネの深刻な病害であるいもち病に対して持続性のある抵抗性（以下、圃場抵抗性）を持っていますが、この優れた性質がどの遺伝子によるかはわかっていませんでした。今回私たちは、ゲノム情報を利用して、陸稲がもつ圃場抵抗性を支配する、最も重要な遺伝子pi21を特定し、この遺伝子がこれまでの抵抗性遺伝子とは異なる構造を持つことを明らかにしました。

これまでは、交配により陸稲のいもち病抵抗性を水稲に導入した場合、いもち病に強くなるものの、食味が低下するので、この抵抗性は育種に利用されませんでした。今回の研究で私たちは、その原因が、陸稲型のpi21遺伝子の近くに食味を損ねる遺伝子があり、従来の品種改良では両遺伝子が同時に品種に取り込まれてしまうためであることを明らかにしました。そこで、ゲノム情報を利用した新たな育種法により、食味を損ねる遺伝子を切り離して陸稲型のpi21遺伝子だけを水稲に導入し、良食味でいもち病に強い品種を作出しました。

今回の成果は、遺伝子の位置情報を利用して長年にわたる品種改良の問題を解決した初めての事例で、ゲノム情報を利用して農業上重要な特性に関わる遺伝子を発見したのみならず、イネが病害に強くなる仕組みの解明にも貴重な情報を提供するもので、より安定した生産を可能にするイネの開発に貢献できると期待されます。

この成果の概要は、米国科学雑誌「サイエンス」の2009年8月21日号（米国時間）で公開される予定です。

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