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プレスリリース
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平成22年5月28日
独立行政法人 農業生物資源研究所

生殖を操るリズムを生み出す脳内メカニズムを解明

- 動物の繁殖性向上と人の不妊治療に向けた大きな第一歩 -


ポイント
  • 動物の生殖を調節する脳内メカニズムを解明しました。
  • 卵子や精子の発育を制御するホルモン分泌リズムを生み出すペースメーカーが、脳内視床下部にあるキスペプチン神経細胞であることを発見しました。
  • 動物の繁殖向上技術の開発や人の不妊治療に向けた大きな第一歩です。

概要

1) 生殖に欠かすことのできない卵子や精子の発育は、中枢神経からの指令に伴うホルモンの分泌リズムにより制御されていると考えられていますが、その調節機構が脳のどこに存在し、どのようにしてリズムが作られるのかについては大きな謎とされてきました。
2)農業生物資源研究所と名古屋大学は、東京大学、米国ワシントン大学と共同で、ヤギにおいて、脳の中の視床下部と呼ばれる部位にあるキスペプチン神経細胞が、ペースメーカーとして卵巣や精巣の働きを制御する神経活動のリズムを生み出していることを示すとともに、そのリズムが活性化と抑制作用を持つ2種類の脳内生理活性物質による拮抗的な相互作用に由来することを世界に先駆けて明らかにしました。
3)今回得られた知見は、哺乳類に共通した生殖制御のメカニズムと考えられ、家畜などの繁殖向上技術の開発のみならず、人の不妊治療や遺伝的生殖機能不全の解決に大きく貢献していくことが期待されます。
4)この研究成果は、2月24日に刊行された Journal of Neuroscience (米国の国際雑誌)に掲載されるとともに、全世界1,500名以上の生物医学系研究者による評価システムである Faculty 1000 of Biology に選ばれ、高い評価を得ました (F1000 Factor 4.8)。
予算:新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業(生研機構:H19−H23)
参考資料 [PDFファイル:991キロバイト]
Yoshihiro Wakabayashi, Tomoaki Nakada, Ken Murata, Satoshi Ohkura, Kazutaka Mogi, Victor M. Navarro, Donald K. Clifton, Yuji Mori, Hiroko Tsukamura, Kei-Ichiro Maeda, Robert A. Steiner, and Hiroaki Okamura
Neurokinin B and Dynorphin A in Kisspeptin Neurons of the Arcuate Nucleus Participate in Generation of Periodic Oscillation of Neural Activity Driving Pulsatile Gonadotropin-Releasing Hormone Secretion in the Goat
The Journal of Neuroscience, February 24, 2010, 30(8):3124-3132; doi:10.1523/JNEUROSCI.5848-09.2010

問い合わせ先など

研究代表者:(独)農業生物資源研究所 理事長石毛 光雄
研究推進責任者:(独)農業生物資源研究所動物科学研究領域
脳神経機能研究ユニット長 岡村 裕昭
電話番号:029-838-8649、電子メール:hokamu@affrc.go.jp
研究担当者:(独)農業生物資源研究所動物科学研究領域
脳神経機能研究ユニット 任期付研究員 若林 嘉浩
名古屋大学大学院生命農学研究科教授大蔵  聡
広報担当者:(独)農業生物資源研究所広報室長川崎 建次郎
電話番号:029-838-8469


【掲載新聞】 5月31日月曜日:日本経済新聞、6月4日金曜日:朝日新聞、6月10日木曜日:化学工業日報、6月11日金曜日:科学新聞
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