トップページ > プレスリリースリスト > 世界初、昆虫幼若ホルモンの輸送メカニズムを解明

<お願い>
(独)農業生物資源研究所の省略形としては
「生物研」を使用願います。
農業生物資源研究所ロゴマーク
プレスリリース
平成24年3月9日
独立行政法人 農業生物資源研究所

世界初、昆虫幼若ホルモンの輸送メカニズムを解明

- 害虫だけに効く農薬開発に期待 -


ポイント
  • 昆虫幼若ホルモンとその輸送タンパク質の複合体の立体構造を世界で初めて明らかにしました。
  • 幼若ホルモンの血液中での輸送の仕組みが明らかになりました。
  • この立体構造情報を利用した新規農薬開発の加速化が期待されます。

概要

1.

幼若ホルモン(JH)1)は、昆虫では最も重要なホルモンの一つで、様々な生理現象に関与しています。JHを模して開発されたJH様化合物2)は昆虫の変態を妨げることで殺虫効果を持つ一方、人に対しては影響がないことから農薬として使用されています。しかしながら、JHやJH様化合物が昆虫体内でどのように認識され、働いているかについてはこれまで分かっていませんでした。

2.

今回、(独)農業生物資源研究所(生物研)は、JHと、昆虫の血液内でJHの輸送を行うJH結合タンパク質(JHBP)3)が結合した複合体の立体構造の決定に世界で初めて成功しました。

3.

JHBPに結合したJHの立体構造情報を利用することで、より強くJHBPに結合するJH様化合物の精密な設計が可能になり、害虫だけに効く新規農薬開発が加速されると期待されます。

4.

また、JHは水に非常に溶けにくく、そのままでは昆虫の血液中を移動することができませんが、立体構造を解析した結果、JHBPの分子内部に格納されることによって血液中での移動が可能になることや、標的細胞に到達するとこれを感知して放出されるメカニズムがあることが明らかになりました。

5.

この成果は、平成23年10月28日に英国科学誌 Scientific Reports で公表されました。

予算区分:運営費交付金および生研センター「新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業」(平成17〜21年度)
参考資料 [PDFファイル:50キロバイト]

Suzuki R, Fujimoto Z, Shiotsuki T, Tsuchiya W, Momma M, Tase A, Miyazawa M, Yamazaki T.
Structural mechanism of JH delivery in hemolymph by JHBP of silkworm, Bombyx mori.
Sci. Rep. 1, 133; DOI:10.1038/srep00133 (2011).  OPEN ACCESS

問い合わせ先など

研究代表者:(独)農業生物資源研究所 理事長石毛 光雄
研究推進責任者: (独)農業生物資源研究所 農業生物先端ゲノム研究センター
生体分子研究ユニット  ユニット長 山崎 俊正
電話:029-838-7900、電子メール:tyamazak@nias.affrc.go.jp
研究担当者:(独)農業生物資源研究所 農業生物先端ゲノム研究センター
生体分子研究ユニット 主任研究員  鈴木 倫太郎
生体分子研究ユニット 主任研究員  藤本  瑞
(独)農業生物資源研究所 昆虫科学研究領域
昆虫成長制御研究ユニット 上席研究員  塩月 孝博
広報担当者:(独)農業生物資源研究所 広報室長小川 泰一
電話:029−838−8469


【掲載新聞】 3月13日火曜日:化学工業日報、3月15日木曜日:日経産業新聞、3月23日金曜日:日本農業新聞

» 関連リンク 生物研ニュース No.45 研究トピックス

トップページ > プレスリリースリスト > 世界初、昆虫幼若ホルモンの輸送メカニズムを解明