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プレスリリース
平成24年3月14日
独立行政法人 農業生物資源研究所
東京大学

カイコの蛹への変態を抑制する遺伝子を発見

- 害虫の脱皮・変態を制御する新しい薬剤の開発が期待 -


ポイント
  • カイコの幼虫から蛹への変態を抑制する遺伝子を明らかにしました。
  • この遺伝子が壊れたカイコは幼若ホルモンを作ることができないため、早期に変態し、幼虫、成虫とも小型化します。
  • 世界で初めて幼若ホルモンを持たない昆虫の変異体を同定しました。

概要

1.

カイコの突然変異体「2眠蚕(にみんさん)」は幼虫脱皮を2〜3回しか行わず(正常カイコの脱皮回数は4回)、きわめて小さい成虫になります。今回、(独)農業生物資源研究所(生物研)は、東京大学と共同で、「2眠蚕」を解析し、幼虫から蛹(さなぎ)への変態を抑制する(=幼虫の脱皮回数を支配する)遺伝子を明らかにしました。

2.

同定した遺伝子( CYP15C1 )は、幼若ホルモン1)の体内合成に関与する遺伝子でした。「2眠蚕」は、この遺伝子の機能が失われ、幼若ホルモンを持たないことが明らかになりました。幼若ホルモンには幼虫から蛹への変態を抑制する働きがあるため、「2眠蚕」では早期に変態すると考えられます。なお、幼若ホルモンを持たない昆虫の変異体が同定されたのは世界で初めてです。

3.

本研究の成果は、カイコが属するチョウ目の害虫(ハスモンヨトウ等の大害虫が含まれる)の脱皮・変態の回数・時期を制御することで、食害を減らす薬剤の開発への応用が期待されます。

4.

この成果は、平成24年3月8日付けの米国科学誌 PLoS Genetics で公開されました。

予算区分:農研機構・生物系特定産業技術研究支援センター「新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業」(平成17-21年度)
文部科学省委託プロジェクト「ナショナルバイオリソースプロジェクト」(平成18年度-)
日本学術振興会 科学研究費補助金「若手研究(A)」(平成20-22年度、平成23年度-)、「基盤(A)」(平成21-23年度)、「新学術領域研究」(平成21年度-)
参考資料 [PDFファイル:115キロバイト]

Takaaki Daimon, Toshinori Kozaki, Ryusuke Niwa, Isao Kobayashi, Kenjiro Furuta, Toshiki Namiki, Keiro Uchino, Yutaka Banno, Susumu Katsuma, Toshiki Tamura, Kazuei Mita, Hideki Sezutsu, Masayoshi Nakayama, Kyo Itoyama, Toru Shimada, and Tetsuro Shinoda (2012) Precocious metamorphosis in the juvenile hormone-deficient mutant of the silkworm, Bombyx mori. PLoS Genetics 8(3):e1002486. doi:10.1371/journal.pgen.100248  OPEN ACCESS

問い合わせ先など

研究代表者:(独)農業生物資源研究所 理事長石毛 光雄
研究推進責任者: (独)農業生物資源研究所 昆虫科学研究領域 
昆虫成長制御研究ユニット ユニット長 篠田 徹郎
電話:029-838-6075、電子メール:shinoda@affrc.go.jp
研究担当者: (独)農業生物資源研究所 昆虫科学研究領域
昆虫成長制御研究ユニット 主任研究員 大門 高明
国立大学法人 東京大学 大学院農学生命科学研究科 教授 嶋田  透
広報担当者:(独)農業生物資源研究所 広報室長小川 泰一
電話:029−838−8469


【掲載新聞】 3月16日金曜日:化学工業日報、3月19日月曜日:日刊工業新聞、3月21日水曜日:日経産業新聞、3月30日金曜日:科学新聞、(関連記事:平成24年11月30日金曜日:科学新聞(第6面))

» 関連リンク 生物研ニュース No.45 研究トピックス

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