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プレスリリース
広島大学ロゴ生物研

【本件リリース先】
文部科学記者会、科学記者会、広島大学関係報道機関、筑波研究学園都市記者会、農政クラブ、農林記者会、農林技術クラブ
平成26年11月21日
国立大学法人 広島大学
独立行政法人 農業生物資源研究所

ゲノム編集技術を用いた簡便・正確・高効率な遺伝子挿入法の開発

−ヒト培養細胞、カイコ、カエルで成功−

【ポイント】
  1. 人工DNA切断酵素と生物が持つDNA修復機構の一つを利用して、染色体上の狙った位置に外来遺伝子を挿入する技術を開発
  2. ヒト培養細胞や両生類(カエル)において、目的タンパク質の可視化に成功
  3. 昆虫(カイコ)においても、染色体上の狙った位置に蛍光タンパク質遺伝子を挿入することに成功
【概要】

広島大学大学院理学研究科山本卓教授のグループ(本研究の代表は鈴木賢一特任講師および佐久間哲史特任助教)は、広島大学大学院理学研究科小原政信教授および独立行政法人農業生物資源研究所遺伝子組換え研究センター瀬筒秀樹ユニット長らのグループとの共同研究により、人工DNA切断酵素(※1)を用いた、簡便、正確かつ高効率な遺伝子挿入技術の開発に成功しました。

本研究では、マイクロホモロジー媒介末端結合(MMEJ(※2))修復機構を利用して外来遺伝子を挿入する新たな手法を用いた結果、ヒト培養細胞やカエルの受精卵において効率よく標的タンパク質を可視化することに成功しました。また、カイコにおいても染色体上の標的部位に緑色蛍光タンパク質遺伝子が挿入されたことが確認され、この技術がさまざまな生物種において有効であることが示されました。

これまで遺伝子挿入は限られた細胞種や生物種のみで行われてきましたが、このたび開発した遺伝子挿入技術により、ヒト培養細胞に限らず、昆虫からほ乳類まで幅広く適用可能となりました。

今後、さまざまな細胞種や生物種でこのゲノム編集技術(※3)が応用され、基礎生命科学研究および応用研究への発展に貢献することが期待されています。

また、応用分野での利用例として、病態モデル細胞や動物を作製する用途、あるいは医薬品スクリーニングのためのレポーター細胞や動物の作製などが期待されます。さらにカイコでは、これまで不可能であった100%組換えシルクの開発が可能になり、生物工場としての利用においても、医薬品等の原料となる有用タンパク質の生産量が劇的に増えることが期待されます。

本研究成果は、11月20日(日本時間午後7時)、英国Nature Publishing Groupの科学雑誌『Nature Communications』のオンライン版に掲載されました。
【URL】http://www.nature.com/ncomms Doi:10.1038/ncomms6560
【論文タイトル】
" Microhomology-mediated end-joining-dependent integration of donor DNA in cells and animals using TALENs and CRISPR/Cas9"
【著者】
Nakade S, Tsubota T, Sakane Y, Kume S, Sakamoto N, Obara M, Daimon T, Sezutsu H, Yamamoto T, Sakuma T and Suzuki K
※1人工DNA切断酵素

DNAに結合する部分とDNAを切断する部分を人工的に融合させたタンパク質(Transcription Activator-like Effector Nuclease, TALEN)や標的配列に結合するガイドRNAを認識してDNAを切断するタンパク質(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats/ CRISPR associated protein, CRISPR/Cas)がある。どちらも、ゲノム中の特定の遺伝子配列のみを切断することが可能である。

※2マイクロホモロジー媒介末端結合

Microhomology-mediated end joining (MMEJ)。真核生物が持つDNA修復機構の一つ。二本鎖切断の際に生じた切断両末端間で、相補的な配列(五〜二十五塩基対)同士で結合し、修復される機構。

※3ゲノム編集技術

人工DNA切断酵素によってゲノムDNAにDNA二本鎖切断を誘導し、その修復過程において、標的遺伝子への欠失や挿入変異を導入したり、ドナー構築を用いた相同組換えによって遺伝子を改変する技術。

【研究内容に関するお問い合わせ先】
広島大学大学院理学研究科
特任講師 鈴木賢一(すずき けんいち)
特任助教 佐久間哲史(さくま てつし)
TEL:082-424-7448、 FAX:082-424-7498
E-mail: (鈴木)suzuk107@hiroshima-u.ac.jp
(佐久間)tetsushi-sakuma@hiroshima-u.ac.jp
独立行政法人農業生物資源研究所 遺伝子組換え研究センター 遺伝子組換えカイコ研究開発ユニット
任期付研究員 坪田拓也(つぼた たくや)
ユニット長 瀬筒秀樹(せづつ ひでき)
TEL/FAX: 029-838-6091
E-mail: (坪田)tsubota@affrc.go.jp
(瀬筒)hsezutsu@affrc.go.jp
国立大学法人広島大学 学術・社会産学連携室 広報グループ
三戸 里美(みと さとみ)
TEL:082-424-3701 、FAX:082-424-6040
E-mail : koho@office.hiroshima-u.ac.jp
独立行政法人農業生物資源研究所 広報室
谷合 幹代子(たにあい きよこ)
TEL:029-838-8469

【掲載新聞】  11月25日日本経済新聞、化学工業日報
12月1日茨城新聞

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