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プレスリリース
平成13年12月21日
独立行政法人 農業生物資源研究所






イネ塩基配列解読国際コンソーシアムが2002年末までにイネの全塩基配列重要部分の解読終了を決定



 国際イネゲノム塩基配列解析プロジェクト(IRGSP)は完全なイネゲノム塩基配列獲得を目的とする科学者で組織する世界的規模のコンソーシアムであり、同一の解析品種を用いて解析素材を共有し、得られた配列を迅速に公開している。現在、IRGSPはイネゲノムのほぼ50%領域の塩基配列をフェーズ2(高精度ドラフト配列)あるいは完成レベルで公開している。

 ゲノム研究所(TIGR、米国メリーランド州ロックビル)において最近開催された会議において、IRGSPは2002年末までにイネゲノム全塩基配列をフェーズ2以上で完全解読することを宣言した。この期日はIRGSPの最近の進捗状況と各国の機器・予算整備状況から定められた。IRGSPの最終目標はイネゲノム全塩基配列の完成レベル解読である。

 デオキシリボ核酸(DNA)は対になったヌクレオチドが二重鎖らせん構造を成す。「完成レベル」配列とは、全ヌクレオチドが99.99%以上の精度で決定され、鎖が隙間なく読みとられている配列である。「フェーズ2レベル」配列とは、隙間はあるものの、読みとられたヌクレオチドを含むDNA小断片の位置とその方向性が明らかにされている配列である。実際の実験では、各ヌクレオチドは平均10回読まれている。最も重要なことは、各DNA小断片のゲノム上の存在位置が明確な点である。

 完成およびフェーズ2レベル塩基配列の正確さは、ホールゲノムショットガンで得られる塩基配列と対照的である。後者は迅速な解析が行えるが、得られた配列は精度が低く、多数の隙間があり、また、配列が由来するゲノム上の位置が不明である割合が高い。

 イネはあらゆるイネ科穀類のモデルである。イネ科穀類間の遺伝子の並び方は高度に類似している。イネの正確な塩基配列に基づく遺伝子地図を獲得することで、他の穀類において対応する遺伝子の存在箇所情報が得られるのみならず、発現調節に関わる塩基配列情報の入手も可能になる。

 イネ品種改良にはますますゲノム技術が必要とされる。イネ重要農業形質を担う遺伝子の存在箇所と塩基配列を知ることにより、育種担当者は交配選抜過程で標的遺伝子を見失うことなく追跡でき、育種の効率化と成功率を高めることができる。更に、標的遺伝子の塩基配列を手に入れることで、他の品種や近縁種に存在する、より好ましい変異を探索することが可能になる。このようなゲノム技術は公開された、高品質の、地図情報が付加された塩基配列によってのみ可能である。

参加科学者(PI)と所属機関および国名
佐々木卓治RGP、独立行政法人 農業生物資源研究所、日本
Robin Buellゲノム研究所(TIGR)、米国
Rod Wingクレムゾン大学、米国
Dick McCombieコールドスプリングハーバー研究所、米国
Jo Messingラトガース大学、米国
Bin Han中国科学院遺伝子研究センター、中国
Yue-ie Hsing中央研究院植物ゲノムセンター、台湾
Akhilesh Tyagiデリー大学、インド
Ho Il Kim農業科学技術研究所、韓国
Francis Quetierジェノスコープ、フランス

研究担当者:独立行政法人 農業生物資源研究所 ゲノム研究グループ長 佐々木卓治
電話:0298-38-2199 または 7066
FAX :0298-38-2302 または 7066
E-mail:tsasaki@nias.affrc.go.jp
広報担当者:独立行政法人 農業生物資源研究所 企画調整部 広報普及課 宮前正義
電話:0298-38-7004








[掲載新聞]
2001/12/25日本農業新聞、化学工業日報
2002/01/01日刊工業新聞