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プレスリリース

平成15年12月17日
イネ研究10年計画委員会




イネ研究10年計画提案

- 今後10年のイネ研究戦略に関する提案書 -

【要約】
 2002年12月のイネゲノム解読宣言を受けて、岩渕雅樹((独)農業生物資源研究所理事長)の諮問を受けた、我が国のイネをはじめとする植物生命科学研究の中心となって活躍している大学、国公立試験研究機関、民間の研究者で構成された「イネ研究10年計画委員会」は、世界の動向を見据えたこれからのイネ研究のありかたをまとめた提案書を作成した。
 本提案書は、委員会のワーキンググループのメンバー(世話人: 井澤 毅(農業生物資源研究所))であり、今後、我が国のイネ研究を牽引していくであろう16名の若手研究者が主体となり提案書を作成した点で、他の提案書とは一味違った異彩を放っており、決意表明に近い内容になっている。提案書は、希望者には配布予定。

【提案書の要点】

  1. 将来の理想的なイネをめざして、どこでも(耐環境ストレス性、耐病・耐虫性、収穫期調節)、だれでも(省力化、少コスト化)、おいしく(良食味、高品質、薬効)、たくさん(多収性、バイオマス増、省スペース化)の4つの大目標を達成するための研究戦略が様々な観点から検討され、具体的に提示されている。
  2. これまでの10年間にわたる農水省イネゲノムプロジェクトの研究成果によって得られた基礎・基盤的な発見・情報・材料をもとに、イネを科学的側面からだけでなく、農業的に有用な性質も対象として、作物としてのイネの向上を図る研究を進めることを提案している。この研究により、イネだけではなく、イネ科に属する他の作物(トウモロコシ、コムギ、オオムギ等)の研究・育種の範となる成果を上げることを目指す。
  3. 今後の10年間に、野生イネ(農耕以前から存在したイネ)や人類が作り出した多くの栽培種が持つ様々な性質を研究し、その中から、これまで利用されていなかった有用遺伝子の発掘を進め、それを有効に利用して将来の理想のイネを作る筋道を示している。
  4. そのためには、マニフェスト型プロジェクトを立ち上げ、従来の組織、体制、職責にこだわらず、組織横断的な研究チームを期限付きで立ち上げ、計画的・効率的に研究を進める事が重要であることを強調している。これにより、得られるであろう基礎的な発見を基にして短期間に新しい品種を作り出すことができるとしている。

【問い合わせ先】
イネ研究10年計画委員会

農業生物資源研究所分子遺伝研究グループチーム長矢野昌裕
Tel. 029-838-7443
名古屋大学生物分子応答研究センター教授松岡 信
Tel. 052-789-5218

イネ研究10年計画ワーキンググループ
農業生物資源研究所分子遺伝研究グループ主任研究官井澤 毅
Tel. 029-838-7445
東京大学大学院農学生命科学研究科助教授藤原 徹
Tel. 03-5841-5105

広報担当
農業生物資源研究所企画調整部情報広報課長下川幸一
Tel. 029-838-7004


イネ研究10年計画委員会メンバーリスト(アイウエオ順)
井邊時雄(独)農業・生物系特定産業技術研究機構 作物研究所 稲研究部長
内宮博文東京大学 分子細胞生物学研究所 教授
荻原保成横浜市立大学 木原生物学研究所 助教授
久保友明日本たばこ産業(株) 植物イノベーションセンター 所長
佐々木卓治(独)農業生物資源研究所 ゲノム研究グループ長
倉田のり国立遺伝学研究所 植物遺伝研究室 教授
篠崎一雄理化学研究所 ゲノム化学総合研究センター プロジェクトディレクター
柴田大輔(財)かずさDNA研究所 植物遺伝子第2研究室長
島本 功奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス科 教授
武田和義岡山大学資源生物科学研究所 大麦・野生植物資源研究センター 教授
廣近洋彦(独)農業生物資源研究所 分子遺伝研究グループ長
福田裕穂東京大学大学院 理学系研究科 教授
松岡 信名古屋大学 生物分子応答研究センター 教授
矢野昌裕(独)農業生物資源研究所 分子遺伝研究グループ 応用遺伝研究チーム長
山谷知行東北大学大学院 農学研究科 教授
吉村 淳九州大学大学院 農学研究院 教授

イネ研究10年計画ワーキンググループメンバーリスト(アイウエオ順)
芦苅基行名古屋大学
井澤 毅(独)農業生物資源研究所
岩田洋佳(独)農業・生物系特定産業技術技術研究機構
伊藤純一東京大学
蛯谷武志富山県農業技術センター
川越 靖(独)農業生物資源研究所
川崎 努奈良先端科学技術大学院大学
草場 信(独)農業生物資源研究所
杉本和彦(独)農業生物資源研究所
瀬尾茂美(独)農業生物資源研究所
土井一行九州大学
野々村賢一国立遺伝学研究所
馬場知哉慶應義塾大学
平林秀介(独)農業・生物系特定産業技術技術研究機構 作物研究所
福岡修一(独)農業生物資源研究所
藤原 徹東京大学

 

[参考]
イネ研究の現状と将来の方向性について
- イネ全ゲノム配列決定をうけての研究者からの提案 -

目  次
1  前  文
2  イネ研究の流れと分子遺伝学的解析
2−1  イネ分子遺伝学研究の歴史
2−2  ゲノム研究の成果を利用したイネ分子遺伝学的研究の進め方
3  生物学的・非生物学的ストレス研究
3−1  耐病性・耐虫性研究
3−2  耐環境ストレス性研究
4  基本成長プログラム研究
4−1  形態形成研究
4−2  生殖研究
4−3  信号伝達研究
4−4  栄養・同化研究
5  イネ量的形質・多様性研究
5−1  農業形質QTL解析
5−2  多様性研究
6  有用物質生産研究
6−1  可食部での有用物質生産
6−2  栄養器官での有用物質生産
6−3  GMイネの商品化
7  新育種システムの開発
7−1  間接選抜
7−2  戻し交雑とマーカーの併用による近傍連鎖の解消や同質遺伝子系統育成
7−3  染色体断片置換系統群の育成(有用遺伝子の評価とその利用)
8  ゲノム基盤研究
8−1  ゲノムリソース研究
8−2  バイオインフォマティクス研究
9  まとめ:これからのイネ研究に向けて

コラム:遺伝子組換え技術
1  遺伝子組換え技術の変遷
2  遺伝子組換え技術の応用
3  組換え体の安全性評価


【掲載新聞】
2003/12/18日本農業新聞、化学工業日報
2003/12/30日本農業新聞

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