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【要旨】 【研究合意の概要】 【問い合わせ先】 【背景】 【今後の展開】 【用語】

【背景】

    2004年に鶏、牛のゲノムの概要配列が公開され、肉質、抗病性等の家畜・家きんの有用形質について、ゲノム情報を利用した育種の効率化への期待が高まっています。一方、豚においては、育種改良だけでなく、人の医学研究における実験モデルとしてもその重要性が指摘され、塩基配列の解読等によるゲノム情報の整備が望まれています。

     2003年9月より、米、英、仏を中心として、日本、韓国、中国、デンマーク等も加えた国際コンソーシアムが結成され、ゲノム解読のための材料の整備が進められてきました。さらに、2006年1月には、米国農務省(USDA)がブタゲノム解読のために1,000万ドルを拠出することが発表され、全ゲノム解読の本格的な実施が始まっています。

     USDAの予算によるブタゲノム解読は、世界最大のゲノム解析の拠点である英国サンガー研究所を中心に、豚のゲノム上に位置付けられたBACクローン(1)をランダムに解析する、いわゆる「階層的ショットガン」方式によって実施され、2008年1月までに完了する予定です。2008年初頭には、国際コンソーシアムによってブタゲノムの概要配列として公開される見通しです。

    生物研は、これまでにイネゲノムの完全解読において実績を持つSTAFFとブタゲノムの解析においても共同研究を行っており、有用遺伝子の位置を示す遺伝地図の作成、ゲノムの部分解読や体内で発現する遺伝子の解析等に注力してきましたが、今後はブタゲノム情報の一層の充実のために、全ゲノム解読において応分の国際的貢献を行うことが必要と判断しました。

【今後の展開】

  1. 生物研とSTAFFは、ブタ全ゲノムをカバーするBACクローンの中から、担当するゲノム領域を含むBACクローンの提供をサンガー研究所より受け、解読を行います。初年度は有用遺伝子が集中する第7染色体(長腕)の解読を開始します。
  2. 解読の結果は公的データベースに登録されると共に、サンガー研究所によるブタゲノム全塩基配列データの作成に用います。得られた共同研究で得られた成果は最終的に国際コンソーシアムの成果として一般に公表されます。
  3. 生物研は、国際コンソーシアムを通じて、また国内の研究機関との間で、より一層の情報交換および共同研究を行い、ブタゲノム情報の充実とそれを利用した新たな畜産技術の開発や医学研究用のモデル動物としてのブタの新規利用への貢献を目指します。

【用語】
(1) BACクローン
BAC(Bacterial Artificial Chromosome;大腸菌人工染色体)クローン巨大なゲノム全体(ブタで30億塩基対)を断片化(15万塩基対程度)したゲノムの一部を大腸菌に組込んで、塩基配列の分析を容易にしたもの。


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